米6月卸売物価指数、前月比横ばい 関税をサービス下落が相殺

米労働省が16日発表した6月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は、前月比横ばい、前年比2.3%上昇だった。2022年2月、ペンシルベニア州・フィラデルフィアのマーケットで撮影(2025年 ロイター/Hannah Beier)
Lucia Mutikani
[ワシントン 16日 ロイター] - 米労働省が16日発表した6月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は、前月比横ばい、前年比2.3%上昇だった。輸入関税による商品価格の上昇がサービス部門の価格下落で相殺された。
エコノミスト予想の0.2%上昇を下回った。
5月は前月比0.3%上昇(前回発表値0.1%上昇)、前年比2.7%上昇(同2.6%上昇)に上方修正された。
サービスコストの軟化が持続すれば、関税に起因するインフレ高進が経済全体にわたる広範な価格上昇圧力につながらないとの見方がある一方で、今回のデータはトランプ大統領が4月に発表した包括的な関税措置がインフレを押し上げ始めていることを示唆した。
これらを踏まえ、連邦準備理事会(FRB)は利下げ再開を巡り慎重な姿勢を維持する公算が大きいとみられる。
FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は、「インフレの脅威は非常に現実的であり、これでも7月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げが議論の対象外にならないなら、何をもってしても不可能だろう」と指摘。「FRB当局者は、(トランプ)大統領の歓心を買おうとしているのでない限り、利下げを推進する可能性は低い」と述べた。
変動が激しい食品とエネルギーを除くモノ(財)の価格(コア指数)が0.3%上昇したことが、全般的な上昇の主因となった。同指数は5月は0.2%上昇していた。通信機器および関連機器の価格が0.8%上昇と、前月(0.4%上昇)に続いて上昇したことが価格上昇の押し上げ要因となった。
家庭用家具は1.0%上昇と、5月の0.7%上昇に続いた。家庭用電子機器は0.8%上昇。5月は横ばいだった。自動車価格は0.3%上昇した。
機械や機器、部品、供給品、衣料品・宝飾品も上昇した。
一方、サービスは0.1%下落。5月の0.4%上昇から反転した。
ホテルなどの宿泊料金の4.1%下落が、サービス価格下落の半分以上を占めた。航空運賃も2.7%下落した。不透明な経済見通しにより、休暇旅行を含む消費支出は落ち込んでいる。トランプ政権による移民取り締まりへの反発もあり、米国を訪れる外国人観光客数は減少傾向にある。
ポートフォリオ管理手数料は2.2%上昇した。
エコノミストの間では、6月の消費者物価指数(CPI)は4月に導入された関税措置によるインフレ上昇の始まりだった可能性が高いとの見方や、旅行やホテル宿泊の需要軟化により、サービス価格の伸びが鈍化し、関税に起因するインフレ高進が部分的に相殺されるとの見方が混在している。
CPIとPPIのデータからエコノミストが推定する6月の個人消費支出(PCE)のコア価格指数は0.3%上昇となった。5月は0.2%上昇だった。前年比では2.7%上昇と、5月と同水準となった。
ネーションワイドの金融市場エコノミスト、オーレン・クラチキン氏は、「関税転嫁の大部分が見られるのはこれからで、夏から秋にかけて起こる可能性が高いとみている。ただ、企業が利用できる戦略は数多くあるため、転嫁率は当初の予想より低くなる可能性がある」と述べた。