コラム

米国債デフォルトに怯えるトランプ......日本は交渉カードに使えばいい

2025年05月13日(火)15時30分

これからどうなる? 1956年のスエズ危機での英ポンド暴落がその国際基軸通貨の地位からの転落を決定づけたように、ドル覇権はいよいよ終わるのか? いや、それはあるまい。56年はドルが既に幅を利かしていたが、今はドルに交代し得る強い通貨は存在しない。中国は人民元を外国人の勝手に使わせたくない。

日本は保有米国債を取引カードに

一方、覇権交代なしのドルの急落だけなら起こり得る。「アメリカの金利が上がればドル高」が定石だが、米国債が崩落するかもしれない時にドル需要は発生しないから、ドルは落ちる。落ちても、諸外国は一番便利で信頼できるドルを使い続けるだろうから、ドル覇権は消えない。


2008年のリーマン危機のようなことになるのか? リーマン危機は、民間のジャンク債が不良化して金融の目詰まりが起き、不況を起こしたのが主な構図で、米国債のデフォルト危機ではなかった。今回は、米国債の不良債権化が問題なので、放置すればまずハイパーインフレが起きる。リーマン危機のような金融不況は、その後に起きることになるだろう。

逃げ道はあるか? 4月の関税引き上げで増えた財政収入は1カ月で80億ドル程度。これでは利払いの1兆ドルにとても及ばない。結局のところ、考えられるのは、ちらちら報道されているとおり、現国債の一部を「永久国債」(つまり利払いはするが、償還期限のない国債)で借り換えて、返済額を減らすことだ。19世紀のイギリスはまさに、GDPの3分の1にも相当する永久国債(コンソル公債)を発行していた。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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