コラム

駐留米軍は本当に必要なのか? 戦後80年の日米関係を棚卸しせよ

2025年01月14日(火)15時30分

米軍普天間基地に並ぶオスプレイを見つめる CARL COURT/GETTY IMAGES

<トランプ次期米大統領の就任でアメリカが「ならず者外交」に回帰するかもしれない今年は日米関係をゼロから見直す良い機会>

新年早々、筆者は沖縄の嘉数(かかず)高台から眼下の米軍普天間基地を見下ろしていた。「有名な」オスプレイが旋回を繰り返しては、着陸の訓練を続ける。「周りは人家が密集」していることになっているが、それは言いすぎだ。人家は航空機の進入口の南方に集中してはいる。しかし、そのような情景は大阪の伊丹空港など世界では珍しくない。

問題は、占領軍が駐留軍と名を変えはしたものの、戦後80年もたって、なぜまだ日本の領土に居座っているのか、なぜ日本は安全くらい自前で守れる態勢をつくってこなかったのか、ということにある。


筆者は戦後世代で、戦争は知らない。それでも、東京郊外のゼロ戦のエンジン組立工場の廃墟近くに建てられたバラックで育ったので、身の回りは破壊の跡、そして駐留米軍のジープや派手な尾ひれの付いた乗用車で満ちていた。それはごく自然な生活の一部で、反感も憤怒も全くなかった。

だが、外交官として過ごした35年、アメリカはほぼいつも頭上に覆いかぶさっていた。自立したくとも、日本の世論のかなりの部分は防衛力整備に抵抗したので、安保面での対米依存は続けざるを得ない。そのことは、日米関係を偽善的なものにした。

つまり、アメリカは同盟関係をうたいながら、日本人を「突然真珠湾を攻めてきた」テロリストまがいの危険人種、とみることをやめない。日本は同盟関係をいいことに、当時の低賃金労働で作った工業製品を大量にアメリカに売り込み、いくつもの米企業を破綻させていとわない。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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