日米同盟の希薄化で日本は再び騒乱の幕末へ
国民国家という構造物は、アメリカ、中国をはじめ、英仏独のような老舗でも手に負いかねている。日本はガバナンスを欠く点では欧米諸国と同じだが、その政治思想の根底にロックやミルなどの西欧リベラル思想家の哲学を欠く点で際立っている。
人間を物事の中心に置く、リベラルな人間主義がないなか、国論は戦前復古主義とマルクス主義的階級論に二分されてきた。教育もそうで、今の日本には、現代社会に見合う価値観、日本人の背骨となるべき基本的な価値観がないのだ。
政策を動かす官僚たちは手続きを守ること、諸方に連絡して了承を取ることに忙殺され、戦略・政策を作るマインドを欠く。戦略・情勢を見る専門家たちは実務経験がないから、政策を動かすノウハウを欠く。こうしてアタマと背骨がない存在が、マンガ・アニメやJ-POPなど感性だけを売り物に荒くれ者たちの世界を泳いでいる。
対米依存からの脱却は日本人の夢。だが望むと望まざるとにかかわらず、日本は旅立ちを迫られるかもしれない。アタマと背骨のない存在はそれに耐えられるのか。やけっぱちの「ええじゃないか」踊りのなか、開国派と尊王攘夷派が問答無用の斬り合いを繰り広げた幕末が思い起こされる。

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