コラム

100年前の歴史に学ぶ日本の未来

2022年01月12日(水)11時45分

バイデン政権は同盟国のために核抑止力を提供するのに後ろ向きだし(「核による先制攻撃はしない」とわざわざ公言しようとしている)、中国が主要な脅威だと言いながら、アジア方面の兵力を増強しない。いま進んでいるクアッド、つまり日米豪印による4カ国間の安保協力も、100年前のワシントン体制下の四カ国条約と同じく軍事同盟ではない。

それよりも、米中がある日突然手を握って、アジアに「集団安全保障体制」(といっても弱者を保護する機能は持たない)を打ち上げ、日本はその中で「自己責任でやってくれ」ということになる危険性にも気を配っておかないと危ない。アメリカに突然手のひらを返されることは、1971年のキッシンジャー訪中で既に経験している。

日本はもはや地域一の大国ではない。だから100年前のように未成年の無免許暴走運転を始めることはないだろう。代わってオーストラリア、ニュージーランド、ASEAN(東南アジア諸国連合)、韓国、台湾、南西アジア諸国の一部との提携を強め、自前の防衛力を強化し、米中ロといった大国とはバランスをうまく維持する。

そして自由で繁栄した民主主義の社会(それはまさに100年前の日本が築き始めたものだ)を守っていくべきだ。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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