コラム

秩序なき世界で日本の新首相が示すべき旗色

2021年09月25日(土)15時38分

その中で、日本人はどうやって自分たちの品位と高い生活水準を維持していくか。戦前の満州浪人のように背丈に合わない大戦略を実現しようとしたり、逆に途上国の人々を助ける一心で悪意を持つ者に殺されたりという過度の純真さは避けねばならない。新首相は、そのバランスを自ら会得し、国会議員、官僚、社会の諸利益団体を動かしていける人でないと困る。

誰が首相になろうとも今の日本が抱える問題は同じ。まず、日本経済の活力を少しでも回復することだ。再生可能エネルギー、人工知能(AI)の活用などで、日本は世界のトレンドから既に周回遅れになっていることをよく見据え、意識の改革を図っていく。

日本=技術大国というのは、もうひと昔前のこと。企業組織を活性化して改革への勇気を持つ。そして、外国語を使いこなし、外国人のものの考え方を心得、日本人としての自我も意見も持っている人間を1人でも多くつくらないと、日本は今の置いてきぼり状態から抜け出せない。

民主主義であろうが専制主義であろうが、仲間内の争いは起きる。しかし民主主義、市場経済の国なら個々人は自分の口に合わない、あるいは自分の利益を害する政権に選挙でNOと言えるし、企業も自力で生存と発展を図っていける。

肝心なのはこの中で、生活水準と国としての品位を守ること。この目標の旗は見失いたくない

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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