コラム

中国・ロシアが退潮する世界で、際立つ日米協調「G1.5」の存在感

2019年06月13日(木)13時30分

世界情勢の底流の最たるものはアメリカの独り勝ちだ。トランプの言う「アメリカ・ファースト」は嘲笑されながらも、世界情勢はじわじわとアメリカに有利になりつつある。国連やWTOはトランプの制裁関税に対して何もできない。日欧企業はアメリカの対中国・ロシア・イラン・北朝鮮制裁の抜け駆けをしたと言われないよう、戦々恐々だ。世界経済は法律面で米国法の影響下に収しゅうれん斂しつつある。

心配は唯一、米景気の下降だ。企業債務がGDPの7割に達しており、その多くを占める社債の償還条件が悪化すれば、金融バブルが崩壊しかねない。米経済がこければ、08年のリーマン・ショックと同じく世界もこける。今度は中国も独り勝ちとはいかない。そうなれば基軸通貨ドルを握るアメリカの立場はますます高まるだろう。

大乱が起きそうで起きないこの時代、しばし日米G1.5の安定感に浸ることとしよう。

<本誌2019年6月18日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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