コラム

安倍首相が2018年に北朝鮮を電撃訪問すべき理由

2017年12月26日(火)12時10分

では中国か。習近平(シー・チンピン)国家主席の来日が18年の目玉──これも危ない。中国も対日関係改善を欲しているようなので、日本からわざわざ下手に出て節操を曲げるのは愚の骨頂。経済界は評価しても、国民から失笑を買う。

起死回生の一発といえば、北朝鮮を電撃訪問して半島危機を打開することだ。「アメリカにやられるのではないか」という北朝鮮の懸念を拭い、朝鮮半島を現状で固定させる。安定した北朝鮮が中韓の間にくさびとしていてくれることは、日本にとっては悪くない話だ。

忘れてはいけないのは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子を核とする性急な改革と反イラン政策が中東を不安定化させ、石油供給が途切れる「油断」もあり得ることだ。中東外交、そして石油備蓄の強化を進めるべきだろう。

長期政権でしかできない

安倍政権がやるべきことは小手先の人気取りではない。景気がいいとはいっても、それはリーマン・ショック後の米中欧と連携しての財政・金融緩和によるドーピング。需要増大が投資の増大を呼び、それがまた利益と賃金を向上させて需要を一層増大させるという、経済の自律的成長過程には入っていない。

安倍政権のような長期政権でしか手掛けられない、政治面での課題も多い。将来、衆参両院でまた「ねじれ」が生じて日本の政治を麻痺させないよう、参議院をドイツのように各州(県)が任命する代表で構成するなどの改革が必要だ。衆議院については、一時的な人気で与党がくるくる代わるポピュリズム政治を防ぐために、小選挙区制の手直しが必要だろう。

もっと大きなことを言えば、ネットを通したスピーディーな直接参加が当然の若者の間では、国会議員を代表に選んで物事を決めてもらう代議制民主主義は時代遅れになっている。若者が直接選挙的な政治参加を求めていることにどう対処するかという問題がある。

そして日本人が世界を舞台にやっていけるために、若者が自分で考え判断できるように教育を変えていかないといけない。大企業に一生勤務、寄生する生き方は廃れていく。今よりずっと多くの者が、板前のように身に付けた能力とスキルで世を渡ることを迫られる。国や企業を動かす者は、与えられた枠の中で課題をつつがなくこなすだけでなく、自ら新しい枠組みをつくっていく気構えと識見を持つことを迫られている。

明治維新以来、日本は幕藩体制から近代的な国民国家へと様変わりした。これからの150年では近代の次、今とは質的に異なる文明へと様変わりするだろう。日本の場合、近代への転換の大半は明治の最初の35年ほどの短期間に実現した。近代からの転換も、先進国では急速に進む可能性がある。

日本を沈滞から救い出すと約束した安倍政権が、今では自分自身を救うことにきゅうきゅうとしている。もっと日本という社会、経済の根底を見つめ、世界の流れを把握し、やるべきことを世論に提示、実行すべきだ。そうすれば安倍政権自身が、国民の求める手堅くフレッシュな政権に変わることができる。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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