コラム

韓国のG7参加を嫌う日本と冷静な韓国との差異

2020年06月05日(金)08時05分
韓国のG7参加を嫌う日本と冷静な韓国との差異

6月2日、トランプと電話会談をした文在寅は、G7への招待を喜んで受けると答えた(写真は2019年6月、ソウルの大統領官邸)

<トランプ米大統領はロシア、インド、オーストラリア、韓国の4カ国を今年のG7に招待すると提案した。かつてなら国を挙げて「先進国入り」を祝ったはずの韓国はしかし、既にG7とは異なる独自の発展モデルを確立しつつある>

G7首脳会議は奇妙な集まりだ。外務省のホームページはこの会議について、「仏,米,英,独,日,伊,加(議長国順)の7か国及び欧州連合(EU)の首脳が参加して毎年開催される国際会議」と平板に説明しているが、それは実は、毎年開かれるこの会議には、公式の名称すら存在しないことを意味している。だからこそ、各国でもこの会議は様々な名称で呼ばれている。例えば、日本語では外務省が「G7サミット(主要国首脳会議)」と記述するこの会議は、英語では極めてシンプルに「G7 Summit」と表記されている。G7とは言うまでもなく、"Group of 7"、つまり単に「7カ国のグループ」だから、"G7 Summit"という言葉には、本来「7カ国のグループの首脳による会談」という以上の意味はない事になる。中国語でも同じであり、英語をそのまま訳した「七国集団峰会」という表現が用いられる。

「先進国」会議と呼ぶのは日本だけ

当然の事ながら、そこには「"主要国"首脳会議」、或いはかつて用いられた「"主要先進国"首脳会議」といったような、日本語の表現が有する独特の語感は存在しない。因みに台湾では「七大工業国組織」という表現が用いられているが、G7は国連やWHOの様な国際機関ではなく、故に恒常的な事務「組織」も存在しない。代わりにOECDや議長国の政府が事務局的な役割を担い、併せて「シェルパ」と呼ばれる首脳の個人代表達の会合が「サミット」開催までに重要な役割を果たすこととなっている。

にも拘わらず、この会議は時に特殊な意味を有している。そして、その意味は第1回の会合の経緯からして明らかだ。1975年の第1回サミットは、当時のフランス大統領であったジスカールデスタンが、1973年の石油危機を契機に会合をはじめた「ライブラリーグループ」(後述)に属するアメリカ、日本、西ドイツ、イギリスの各国首脳を招待する構想を打ち出したのがはじまりであった。即ち、この4カ国に招待国であるフランスを加えた「G5」の首脳により、この会議は行われる筈だったことになる。しかし、ここに自らが招待されなかった事にイタリアが強く抗議した結果、会議は「G6」として行われることになる。

イタリアが抗議した理由は明確だった。それはこのグループのメンバーシップが単純に各国の経済規模により決定されたものだったからである。G7の元となった「ライブラリーグループ」は、石油危機に対処すべく、世界経済に影響力を持つ、冷戦下の西側における当時のGDP規模上位5カ国によって形成された。そしてだからこそ、その直下の6位に位置するイタリアは自らの頭上にひかれた線引きに反発した。そして、この6カ国に、翌年には7位のカナダが加えられて、今日のG7の枠組みが構成される。その後、1998年から2014年の間はロシアが加えられてG8となり、会議にはEUの代表等も招かれている事は、よく知られている通りである。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長、神戸新聞客員論説委員を兼任。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。著書に『日本の常識は通用しない 慰安婦合意反故「法より正義の国 韓国」』、『朝鮮半島をどう見るか』、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『徹底検証 韓国論の通説・俗説』(共著)など。

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