コラム

住宅足りなすぎ高すぎで買えない問題と、それでも田園地帯をつぶしたくないイギリス人

2025年06月19日(木)16時02分

住宅価格がここまで高騰したのは、長年にわたって住宅ローンが非常に低かったからだとよく言われていた(金融危機後の10年間はほぼゼロ金利だった)。

だが2023年に住宅ローン金利が急上昇したときでさえ、どういうわけか住宅価格は大きく下がることはなかった。だから明らかに、「その他の要因」が住宅ローン金利と同じくらい、あるいはそれ以上に重要になる。


人口の増加、政府による「市場を支援する」(つまり金融ドーピング)取り組み、文化的要因(どんなに高価でもイギリス人は簡単に安く建てられるコンパクトなアパートよりも「きちんとした」戸建と庭を好む)などだ。

現在の労働党政権は、この問題に真剣に取り組む姿勢を示し続けている。他に何が起ころうと、政権がもっとずっと多くの住宅を建てることができれば、需要と供給のバランスが変化するとの考え方をしている。住宅価格はすぐに急落はしないだろうが、時間の経過とともにもっと手頃な価格になるだろう、というわけだ。

でも、この単純な経済理論は政治的な逆風にぶつかる。イングランドの人々は、田舎に住宅団地が次々と出現するのを好まない。ほとんどの人は、わが「緑豊かで素敵な祖国」が新しい道路や無味乾燥な住宅で覆われる事態を毛嫌いする。労働党の政策は、環境を犠牲にして大手住宅建設会社に迎合していると見られてしまうのだ。

これはイングランド南東部に最も打撃を与える。人々が住みたがる場所であり、人口密度が既に最も高い地域だからだ。ロンドン周辺の田園地帯を保護するいわゆる「グリーンベルト」を放棄するのか、といった「難しい選択」をしなければならない、と僕たちは言われている。

これこそが、他の多くの都市のような「スプロール現象」がロンドンでは起こらない理由の1つだ。ロンドンから電車で移動すると、間もなく窓の外には都会の街並みはなくなり、グリーンベルトが始まるのが見える。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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