コラム

イギリスの香港市民受け入れはブレグジット効果

2020年07月18日(土)14時10分

中国の弾圧に抗議する香港デモでイギリスのパスポートを掲げる参加者 Tyrone Siu-REUTERS

<コロナ禍でEU離脱後のイギリスの姿が見えにくくなっているものの、自国の裁量での移民受け入れや犯罪組織摘発などブレグジットの「成果」が現れてきた>

コロナ禍における副作用の1つは、ブレグジット(イギリスのEU離脱)後のイギリスの姿を見極めるのが難しくなっていることだ。新型コロナウイルスはつまり、英政府が平時ならやろうともしないことに取り組んでいることを意味するし(大金をばらまいたり)、平時なら実行しているだろうことをやらないことを意味する。政府はコロナに集中せざるを得ないからだ。

でも、ロックダウン(都市封鎖)とも現在のコロナ危機とも無関係で、興味深い出来事もいくつか起きている。

まず、イギリスは300万人に上る香港市民に英国の市民権を与える道を提案している。EU残留支持者たち、そして世界中の多くのメディアが、ブレグジットを単に外国人嫌いの表れであり、反移民の動きだと吐き捨てていたことを考えると、この方針は意義深い。だが僕がこれまでも主張していたように、ブレグジットは本来、移民問題というより国家として自主的に移民流入のコントロールができないことを問題にしていたのだ。

EUの規制は、イギリスがEU加盟国のあらゆる市民がイギリスに来て働けるよう受け入れ、さらに彼らが連れて来る家族まで認めるよう強制した。これはただでさえ人口過密な国にとっては間違いなく深刻な問題だった。イギリスのインフラに過重な負担をかける。それに、EU加盟国からの移民流入を制限できないのだから、EU圏外からの移民をイギリスが受け入れにくくなることも意味していた。

香港の住民に市民権を与える方針は、中国の独裁政権が香港市民の自由を奪う法律を制定する状況下で、かつての英植民地の人々に対する義務感から発生したものだ。その一方でイギリスは、EU域内の移民がポイント制でイギリスに移動できる仕組み、ただしイギリスにとって必要な人材など基準のポイントを満たした場合に限る、という制度を導入した。刑期1年以上の前科がある者は入国を許されないだろう(EUのルール下では、たとえ数々の前歴を抱える者であっても移動の自由を無効にすることはできなかった)。自国で移民をコントロールできる裁量の自由があるからこそ、イギリスは香港市民に対し、寛大で適切な移民対策が取れるだろう。

犯罪者や組織の資産を凍結

2番目に、イギリスは7月初めに「マグニツキー法」(ロシアの不正を告発中にロシア当局に拘束され獄死した弁護士セルゲイ・マグニツキーの事件に関連して、重大事件に関与した人物や組織に対してビザ停止や資産凍結などの制裁を科す法律)を独自に採用した。EUがこの法について、対象や時期などで合意に達するのを待たずに、だ。イギリスはこれまで、ならず者政権と関わりを持つ個人や企業をブラックリストに加えてきたし、彼らが外国で不正資金をロンダリングするのを防止し、彼らが母国の市民を搾取して利益を得るのを阻止してきた。

マグニツキー法が採用されたことで、まずは、サウジのジャーナリストのジャマル・カショギ殺害に関与した者やマグニツキーの獄中死に関わった者を含む、ロシアや北朝鮮、ミャンマーやサウジアラビアなど出身の49の個人や組織が対象になった。

<関連記事:イギリス版「人種差別抗議デモ」への疑問

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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