コラム

イギリスで「使い捨て」が流行語大賞になったわけ

2018年12月11日(火)18時40分

「プラスチック・イーブン」という考え

そんなわけで僕ももっと何かしなければと思っていた矢先、「プロギング」について耳にした。スウェーデン語で「集める」という言葉と「ジョギング」を掛け合わせたこの言葉は、ジョギングしながらゴミ拾いをする活動を指す。止まってはかがみ、また走り出し、それを繰り返す、というのは確かにいい運動になるが、安定したリズムで走って考えにふけりたいタイプの僕には、イマイチに思えた。でも、ジョギングの後、僕はいつも10~15分歩いてウォームダウンしている。僕はだいたいいつも川沿いか運河沿いを走るから、そのウォームダウンの際に、水に落ちそうなプラスチックごみ(落ちたら海に流れていくだろう)を拾うくらいのことはできそうだと思った。

今では僕は、小さなビニール袋を1枚持ってジョギングに行き、帰宅するまでにそれをいっぱいにしようと決めている。最初は、ほんの5分で目標が達成されたことにホッとしたし、驚きもした。このルートはよく走っているのに、こんなに大量のごみがあるようには全然見えなかった。つい最近のジョギング後には、ゴミ拾いの途中で捨てられたビニール袋あと2枚をみつけ、その2枚までいっぱいになった。だから15分で、ペットボトル5本を含むビニール袋3枚分のプラスチックごみを拾ったわけだ。

正直、僕は他人のごみをきれいにするという考え方があまり好きじゃない。でも僕はこの行動を、僕自身が使い続けているプラスチックを「相殺」する手段だと考えるようにしている。自分が消費するプラスチックと同じだけ、立ち止まっては水際のごみを拾うようになった。ざっと計算して僕は、週に2、3度のランニング後の10分のごみ拾いによって、2週間ごとに75リットルのごみを集めていることになる。

僕は「プラスチック・フリー(不使用)」ではないし、「プラスチック・ニュートラル(中立)」という言葉も当てはまらないと思うが、「プラスチック・イーブン(対等)」を目指そうとしている。この言葉が流行語大賞になりそうもないことは分かっているが、もしも試す気になった人がいるとしたら、かなり簡単にできるうえに、かなりすぐ目に見える結果が出てくる、と言っておこう。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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