コラム

イギリスでもじわり漂う大麻容認の空気

2018年09月05日(水)18時00分

イギリスでも大麻容認の議論は広がっている Toby Melville-REUTERS

<もちろん違法なのに、イギリスで大麻はあまりに一般化しすぎてもはや少量の所持では逮捕もされない。いっそ合法化したほうが利点があると、政治的動きも活発化するが......>

先日ロンドンの公園を歩いていたとき、友人が突然いたずらっぽく言った。「ああ、夏の匂いがする」
 
おかしいのは、僕のところにその匂いが漂ってくる前から、友人の言いたいのはつまり、近くで誰かが大麻を吸っているという意味だとピンときたこと。イギリスでは大勢の若者(あるいはほどほどの年の人々)が大麻を吸っており、夏ともなれば公園や公共の場で大っぴらにふかしている。

その匂いはとても独特で、一度知ったらいつどこでだって気が付くだろう。僕の住む家の通りにも、大麻の匂いがふわりとただよっている。すぐそこの小さなアパートで、若者が集まって窓を大きく開け、大量の大麻を吸っているからだ。

もちろん大麻は違法だが、警察は少量の大麻所持くらいで逮捕はしない。大麻はあまりに広まっているから、警察が「嗜好目的で使用」の容疑者を片っ端から逮捕して回ったら、ほかの仕事が一切できなくなるだろう。

ただでさえイギリス警察は人手不足だから、空き巣事件などは事実上、捜査をあきらめている。警察は麻薬密輸業者や密売人を逮捕することにこそ力を入れているものの、若者が大麻を吸うことには目をつぶっている。

こうした公共の場での薬物使用のように、公然と法律を無視する行為に、激しい怒りの声をあげる人々もいる。法があるのにそれを施行しない(実際のところ、法の無視を黙認している)ことは、法の尊重をないがしろにする効果がある、という意見には僕も賛同する。

僕は、大麻使用の有害な影響も見てきた。軽度の例としては、大学時代に日常的に大麻を吸っていた友人たちが、次第に成績を悪化させていったこと(1人はあまりに落ちこぼれて1年間の停学処分になった)。悲惨な結末としては、精神的な問題を抱えていたある若者が、大麻で極度に症状を悪化させてしまった例を僕は知っている。彼は以前からあるトラウマにさいなまれていたが、大麻で「自己治療」しようとして取り返しのつかないほど悪化してしまった。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:トランプ政権誕生ならインフレ再燃、FRBに新

ビジネス

半導体大手STマイクロ、通期予想を2度目の下方修正

ビジネス

独IFO業況指数、7月は87.0に低下 悲観的見方

ビジネス

現代自動車、第2四半期は過去最高益 米国でSUVな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 2
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに
  • 3
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 4
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 5
    年金財政は好転へ...将来は「年金増額」の可能性大な…
  • 6
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 7
    日本の若者はなぜ結婚をしなくなったのか? 「不本意…
  • 8
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 9
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 10
    中国の一帯一路構想の象徴だった「フォレストシティ…
  • 1
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい」と話題に
  • 2
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 3
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 4
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 5
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 6
    出産間近!ヨルダン・ラジワ皇太子妃が「ロングワンピ…
  • 7
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 8
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 9
    AI生成の「ネコ顔の花」に騙される人が続出!? ニ…
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story