コラム

ニューヨークは壊れている

2010年03月21日(日)12時58分

 ニューヨークは壊れている。

 インフラが古びる前に絶えず最新の(そして高価な)ものに置き換わる東京からこの街にやって来た僕は、驚いてしまった。

 ニューヨークに着いた最初の週、ミッドタウンで大きな爆発が起きて1人が死亡する事故があった。現場は僕が泊まっていたホテルのすぐ近くだった。原因は、1924年に設置された古い蒸気配管が破裂したこと。

 ニューヨークの街のあちこちで、道路から湯気が出ていることを最初に知ったのはいつだっただろう。いつの間にか知っていたように思う(ニューヨークのタクシーが黄色であることも、いつの間にか知っていた)。湯気が出ている理由について深く考えたことはなく、ただニューヨークの「情緒」の1つだと単純に思っていた。

 けれどこの事故で、マンハッタンの地下には暖房に利用する蒸気を運ぶため150キロにも及ぶ管が埋められていることを知った。しかもその管は、心配になるほど旧式だった。

 下水溝はよく満杯になる。雨は下水溝に流れる仕組みだが、大雨が続くとすぐにあふれ出す。
 
 突然道路が陥没することも珍しくない。

 道路は一晩にしてへこむ。今週は僕が住むアパートの前の道路にも穴ぼこができていた。たいていは1、2日で修復されるが、また穴が開く。

colinb.JPG
nya.JPG

 さらに、ニューヨークは崩れている。

 多くの高層ビルは1世紀前に建てられたものだ。当時は胸を張る建築だったのだろうが、要は築100年ということ。こうしたビルについて面白い記事を読んだことがある。通行人からは見えないが、上層階はかなり劣化が進んでいるという。38階から落ちてきた破片が刺さった場合、それほど大きな破片でなくても致命的になるそうだ。

 ニューヨークを訪れるには覚悟が必要だ。でも、壊れてなくなってしまう前に見ておいたほうがいい。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。アドレスはjhbqd702@yahoo.co.jp

ニュース速報

ワールド

フィンランドに現職最年少34歳の女性首相、若手中心

ビジネス

メルケル独首相、金融取引税案を歓迎 株取引のみ課税

ワールド

米民主、弾劾条項に権力乱用と議会妨害 下院本会議で

ワールド

WTOの紛争処理機能が停止、米反対で委員補充できず

MAGAZINE

特集:進撃のYahoo!

2019-12・17号(12/10発売)

メディアから記事を集めて配信する「巨人」プラットフォーマーとニュースの未来

人気ランキング

  • 1

    熱帯魚ベタの「虐待映像」を公開、動物愛護団体がボイコット呼び掛ける

  • 2

    東京五輪、マラソンスイミングも会場変更して! お台場に懸念の米水泳チームが訴え

  • 3

    筋肉だけでなく、スピード・反射神経も高める「囚人筋トレ」の最終形

  • 4

    日本の格差社会が「お客様」をクレーマーにし、店員…

  • 5

    米下院のウイグル人権法案、中国が香港問題以上に反…

  • 6

    「生理ちゃんバッジ」に中国人が賛成だった理由

  • 7

    対中感情が欧米で悪化──米加は過去最悪(米調査)

  • 8

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 9

    フィンランド、34歳女性首相に託されたリベラルを救…

  • 10

    インフルエンザ予防の王道、マスクに実は効果なし?

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を流し込み...

  • 2

    文在寅の経済政策失敗で格差拡大 韓国「泥スプーン」組の絶望

  • 3

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 4

    日米から孤立する文在寅に中国が突き付ける「脅迫状」

  • 5

    ウイグル人権法案可決に激怒、「アメリカも先住民を…

  • 6

    『鬼滅の刃』のイスラム教「音声使用」が完全アウト…

  • 7

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 8

    韓国保守派のホープを直撃した娘の不祥事

  • 9

    5G通信が気象衛星に干渉し、天気予報の精度を40年前…

  • 10

    サムスン電子で初の労組結成──韓国経済全体に影響す…

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を流し込み...

  • 2

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家らが韓国批判の大合唱

  • 3

    「日本の空軍力に追いつけない」アメリカとの亀裂で韓国から悲鳴が

  • 4

    元「KARA」のク・ハラ死去でリベンジポルノ疑惑の元…

  • 5

    「韓国は腹立ちまぎれに自害した」アメリカから見たG…

  • 6

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 7

    文在寅の経済政策失敗で格差拡大 韓国「泥スプーン」…

  • 8

    GSOMIA継続しても日韓早くも軋轢 韓国「日本謝罪」発…

  • 9

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 10

    日米から孤立する文在寅に中国が突き付ける「脅迫状」

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
ニューズウィーク試写会ご招待
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!