コラム

プーチン大統領を「侵略の罪」で裁ける? 欧州が団結して設置する「特別法廷」を知るための5つのポイント

2025年05月16日(金)17時30分

3. 他に誰が起訴される可能性があるのか

特別法廷の目的は、ウクライナに対する侵略犯罪に責任を負うロシアの政治・軍事指導者20~30人を起訴することだと、EUの法曹関係者は説明した。

主な対象には、ロシア軍参謀総長ワレリー・ゲラシモフ、ロシア空軍司令官セルゲイ・コビラシュ、元国防相で現在安全保障会議書記のセルゲイ・ショイグが含まれると『ユーロニュース』は解説する。いずれもICCから逮捕状が発行されている人物だ。

ちなみに彼らには免責特権が適用されず、在任中でも裁判にかけられる可能性があるという。

起訴はロシア人だけに限らない。

欧州評議会は「ベラルーシや北朝鮮の指導者も起訴できるのか」という質問に対して、「特別法廷は、ウクライナに対する侵略犯罪の責任を確定する任務を負っているため、ベラルーシ人や北朝鮮人が、ウクライナに対する侵略犯罪において重要な役割を果たしたことが証拠で示されれば、起訴される可能性がある」と説明している。

4. どのような量刑になる可能性があるのか

犯罪の「極度の重大性」が認められた場合、被告人には終身刑、または最大30年の懲役刑に処される可能性がある。ちなみにEUでは、死刑は廃止されている。財産の没収や罰金も、この新たな法廷を設立する規則に従って可能となる。これらの資産は、ウクライナの復興資金として補償基金に移管されるだろう。

5. 欧州以外の国は参加できるのか

このイニシアチブは、参加を希望するあらゆる国に門戸が開かれているという。

現在、外交交渉が進められており、主要な法的文書が各国によって正式に承認され、発効した時点で、メンバーと準メンバーの名称が公表される予定だ。

日本にも何かしらの期待がかかっていると考えるのは、不自然ではないだろう。

元々日本は、アメリカ、カナダ、メキシコ、バチカン市国と並んで、欧州評議会のオブザーバーで、閣僚委員会などに参加できるステータスを持っている。

しかも、この特別法廷はICCを補完する役割を果たし、両裁判所は相互協力協定を締結することが予測されている。日本はICCの最大の拠出国で、所長は日本人で、しかもアジアの地域事務所を日本に設置することが検討されている。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス・スキーリゾートのバーで爆発、約40人死亡・

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 9
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 10
    米中関係は安定、日中関係は悪化...習近平政権の本当…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story