コラム

プーチン大統領を「侵略の罪」で裁ける? 欧州が団結して設置する「特別法廷」を知るための5つのポイント

2025年05月16日(金)17時30分

2. プーチン大統領は裁判にかけられるのか

ロシアの3人の「トロイカ・メンバー」、プーチン大統領(国家元首)、ミハイル・ミシュスチン首相(政府首脳)、セルゲイ・ラブロフ外相は、在任中は起訴されることがないだろうと、複数のメディアが報じている。国家の現職の首脳は「(機能的)免責権」という特権をもっているからだ。

「検察官は、プーチン大統領に対する起訴状を発行することもできるが、在任中は裁判は行われないだろう。ただし大統領が職を離れると、不在であっても裁判を受ける可能性がある」と、『ル・モンド』はブリュッセルでの取材を報告している。

ただ、欧州評議会の公式サイトには「国際法は進化している」と、含みに取れるような文章がある。起訴は「権力から退いた場合」のほかに「免責が失われた場合」に可能性があるという。

フランス公共ラジオ放送『フランス・アンフォ』は、「現実には、プーチン氏が国家元首である限り、(大統領が裁判にかけられる)可能性は低いと考えられる」と断定を避けて報じている。

もし欠席裁判になった場合は、判決が不服なら手続きの再開を請求する権利があるが、その際は特別法廷に出頭しなくてはならない。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ビデオメッセージで「いかなる潜在的な侵略者も攻撃を仕掛ける前に二度考えるようにする」ためには、正義が必要だと述べた。

「私たちは皆、戦争犯罪者を法廷に立たせるのがいかに困難か理解しています。しかし、私たちは既に道を選択しました。ロシアはこの戦争の責任を問われるでしょう。これはヨーロッパの道義的義務であり、世界中で人間の命を尊重するすべての人々の義務です」と述べた。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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