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日本が完全に出遅れた第三次プラットフォーム戦争
2020年6月に公開された国連事務総長報告「デジタル協力のためのロードマップ」では、「戦略的かつ権限を持つハイレベルのマルチステークホルダー機関」の設立が盛り込まれていた。これは巨大プラットフォーム企業が国家と並んで座り、影響力を行使できる立場になる可能性を示唆しており、この点を問題視したJust Net Coalitionは170の市民団体とともに、巨大プラットフォーム企業が公式な立場と権限を得ることについての懸念を表した国連事務総長宛ての公開書簡を出した。Just Net Coalitionはインドを始めとするグローバル・サウスの国々からの参加の多い組織である。
インドを始めとするグローバル・サウスの国々およびEUなどは、「自由で開かれたインターネット」対「サイバー主権+統制されたインターネット」という枠組みではなく、アメリカと中国およびその企業群によるプラットフォームとデータとインテリジェンス(AI)の独占を阻止しようとしている。
EUはアメリカと並んで自由主義圏に属しているが、だからといってアメリカ主導の「自由で開かれたインターネット」にそのまま従ったのでは自国の権益や安全保障はままならなくなる。自国の立場と基盤を確立する必要から二極化から離れた動きをしている。
おもしろいことに、この戦いにおいて中国以外のほとんどの国は自身を民主主義国家あるいは自由主義国家としている。これは以前の記事「世界でもっとも多い統治形態は民主主義の理念を掲げる独裁国家だった」に書いたように、世界には民主主義の理念を掲げる国は多いが、実装において論理的、科学的に民主主義を実現する仕組みを取り入れていないことが多い。そのため理念は民主主義、実態は権威主義国ということが可能なのだ。
同じように巨大プラットフォーム企業も民主主義的価値観や自由主義的価値観を標榜し、インドのIT for Changeもデータの民主化を訴えている。前掲記事で「よく言えば柔軟、悪く言えば行き当たりばったりの論理性のない世界で民主主義は「大義」として生き延びてきた。中国とアメリカという対立図式が続く間は、繰り返し「民主主義の危機」を政治の文脈の中で都合よく使ってゆくことになるのだろう」と書いたことをそのままなぞるような展開となっている。
これが第三次プラットフォーム戦争にいたる経緯である。
第三次プラットフォーム戦争で重要になる全体像の把握
EU、インド、日本を比較してみると、EUとインドがそれぞれの統治や陣営とは異なる選択で独自の存在感を出しているのに対して、日本は基本的にアメリカおとおよび巨大プラットフォーム企業にべったりである。これは著しく選択肢を狭めるとともに、日本発のプラットフォームが生まれない可能性を高めてしまう。
現在は国家のあらゆる要素を戦争手段にした超限戦と呼ばれる戦争が進行しており、そこにあっては国家も非国家主体も戦争当事者になり得る。巨大プラットフォーム企業が国連の組織で正式な権限を持つようになろうとしたり、複数の国家に統制されたインターネットを提供しているのがよい例だ。
巨大プラットフォーム企業がEUやグローバル・サウスに法制度や人権擁護などで攻撃され、活動を制限されたり、競争力を削がれようとしていることは、日本企業にとっても他人事ではない。世界市場を相手にするような企業なら、この争いに巻き込まれることは必至であり、独自の立場を確保できなければ企業活動を制限されることになるか、アメリカ企業の傘下に入る事になりかねない。日本の一部で盛り上がっているMaaSもプラットフォーム戦争のことは全く意識されていないようなので注意が必要だ。
同じように日本という国そのものもプラットフォームをアメリカの巨大プラットフォーム企業に席巻されるのを黙って見ていると国ごと飲み込まれてしまう。EUやインドのように立場を明確にして、対抗手段を講じる必要がある。ただし、そのためには前提として今後の社会のグランド・デザインが必要だ。
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