コラム

ベルギーは義務、サウジは1人、日本は「異様」? 世界の選挙はさまざま

2021年02月12日(金)17時35分

ILLUSTRATION BY AYAKO OCHI FOR NEWSWEEK JAPAN

<米大統領選で考えさせられた「選挙とは何か」。いまだ「完璧な選挙のかたち」は見つかっていない>

【選挙】
とある選挙の際、一人の有権者が言った。

「僕は彼には投票したくないね。だって、僕は彼がどんな性格でどんな人間なのか、よく知らないから」

するともう一人の有権者がこう言った。

「僕も彼には投票したくないね。だって、僕は彼がどんな性格でどんな人間なのか、よく知っているから」

◇ ◇ ◇

今回のアメリカ大統領選挙をめぐる一連の混乱を見て、「選挙とは何か」「民主主義とはどうあるべきか」といった率直な疑問を抱いた人も多いであろう。

連邦議会議事堂に人々が乱入する光景は国際社会を驚かせたが、中東では「アラブの春」ならぬ「アメリカの春」などと風刺されている。

そもそも選挙制度とは、実は極めて多様性のあるもの。世界にはさまざまな選挙制度があり、いまだ「完璧な選挙のかたち」は見つかっていない。

ベルギーやオーストラリアでは投票は国民の義務とされ、違反者には罰金が科せられる。こうした「義務投票制」は、ルクセンブルクやシンガポールでも実施されている。

日本では投票日は1日だが、インドでは1カ月以上かけて行われるのが一般的。投票を終えた人の指先にはインクが塗られ、同一人物が何度も投票することを防ぐ。

「異様」に映る日本の選挙

サウジアラビアの国会に当たる「諮問評議会」の定員は150名だが、これに対する有権者の数はたった1人。つまり、その有権者とは国王である。

世襲制の国王が全ての議員を任命する制度となっているわけだが、それでも国民の不満は少なく、民主化運動の盛り上がりなどは特に見られない。

同じ中東のイラクでは国民投票が実施されてきたが、サダム・フセイン大統領時代に行われた「大統領の信任と任期延長」を問う投票では、「100%の得票率」で信任が確定。

同様の事例は北朝鮮などで今も見られる。中国が事実上の「一党独裁」であることも周知のとおり。

プロフィール
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃

ビジネス

午後3時のドルは147円前半へ上昇、米FOMC後の

ビジネス

パナソニック、アノードフリー技術で高容量EV電池の

ワールド

米農務長官、関税収入による農家支援を示唆=FT
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story