コラム

中東の人は「ヌクタ」が大好き 例えば、困ったときはアッラーに...

2021年01月08日(金)17時25分

ILLUSTRATION BY AYAKO OCHI FOR NEWSWEEK JAPAN

<サダム・フセイン時代、暴君を「100%」尊敬するイラク人に会った。中東と聞くと「紛争」や「テロ」を連想するかもしれないが、かの地にはジョークや小噺も多い>

【入学試験】
とあるアラブ人の青年が、大学の入学試験を受けた。しかし、彼はどうしても一つの問題を解くことができなかった。そこで彼はやむなく答案用紙に、

「アッラーのみぞ知る」

と書いて提出した。

数日後、合否の通知が届いた。そこにはこう書かれていた。

「アッラーは合格ですが、あなたは不合格」

◇ ◇ ◇

中東と聞くと「紛争」や「テロ」といった言葉を連想する人が多いかもしれない。もちろん、それもやむなしといった哀しき現状があるわけだが、当然ながら実際の現地の光景にはまた違った表情がある。

中東の人々も「ジョーク」が大好きである。中東ではジョークや笑い話を「ヌクタ」などと呼ぶ。アラブ人はとにかくおしゃべり好き。彼らは砂糖のたっぷり入った甘い紅茶や、アルギーレなどと呼ばれる水タバコをゆったりと味わいながら、自慢のヌクタを披露し合う。

中東滞在時に悩まされるのが「インシャアッラー」という言葉。「アッラー」はイスラム教における「神」という意味で、「インシャアッラー」は「神のみぞ知る」「神が望むなら」といった意を表す。先のジョークに出てくるのもこの表現である。

アラブ人はこの「インシャアッラー」を連発する。取材のアポを取ったり、通訳やドライバーと待ち合わせの時間を決めるときなども、彼らは最後に「インシャアッラー」と口にする。これが「きっちりしい」の日本人を不安にさせる。

実際には、彼らは大抵、時間どおりに来るのだけれども。

あの暴君を「100%」尊敬

圧政下にある国民がヒソヒソと独裁者を笑うのは、中東諸国でも同じ。サダム・フセイン時代のイラクを訪れた際、ガイドの男は、

「私はフセイン大統領を尊敬しているよ」

と話していた。私はある日、移動中の車内で彼を問い詰めた。

「君は本当にフセインのことを尊敬しているのか?」

「ああ。100%」

「100%?」

「いや、1000%だな」

彼はそう言った後、私の耳元に顔を近づけてこう囁ささやいた。

「マイナス、ね」

プロフィール
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米IT大手、巨額の社債発行相次ぐ AI資金調達で債

ワールド

トランプ政権、25年に連邦職員31.7万人削減 従

ワールド

米、EUにデジタル規制見直し要求 鉄鋼関税引き下げ

ビジネス

情報BOX:大手銀、米12月利下げ巡り見解分かれる
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story