カーク暗殺の直後から「極左」批判...トランプ政権が完全無視した「都合の悪い真実」とは?

カークの「憎悪にはうんざりだった」と述べていたロビンソン UTAH STATE COURTS-HANDOUT-REUTERS
<アメリカでは「ファクト」は二の次になってしまった──事件後の政権の行動の裏に見える思惑とは?>
トランプ米大統領とも極めて近い関係にあった右派政治活動家のチャーリー・カークが暗殺された事件に関する「ファクト(事実)」は明白だ。
9月10日、カークがユタ州の大学で質疑応答中、ライフルの銃弾がその首を貫いた。恐怖で凍り付く3000人の聴衆の眼前で、カークは大量に出血しながら椅子から崩れ落ちた。
その33時間後、警察はタイラー・ロビンソンという22歳の男性を容疑者として逮捕した。動機についてロビンソンは恋人へのメッセージでこう述べている。「あいつ(カーク)の憎悪にはうんざりだった。ああいう憎しみは、話し合いじゃ解決できない」
ショッキングな暗殺事件は、人々の強い感情をあおり、社会の安定を揺るがす。その点はいかなる社会環境でも言えることだが、トランプが君臨する「ポスト・トゥルース(真実)」のアメリカの際立った特徴は、「ファクト」が二の次になっていることだ。
そして政治の世界で最も大きな意味を持つ「ファクト」は、誰がナラティブをコントロールするのか、という点にある。
捜査当局がカークの死亡を発表した5時間後、つまりロビンソンが逮捕される1日前の段階で、まだ事実関係が明らかになっていないにもかかわらず、トランプはビデオ演説を行い、「極左」の言説が「今わが国で起きているテロ行為の直接的原因になっている」と非難した。
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