コラム

プーチンにコケにされた! トランプの自己愛がウクライナの助け舟になる皮肉

2025年07月26日(土)19時08分
トランプ

NATO首脳会議でゼレンスキーと握手するトランプ(6月25日) UKRAINE PRESIDENTIAL PRESS OFFICEーEYEPRESSーREUTERS

<トランプがウクライナへの武器供与を再開する、と発表した。ほぼ180度の方針転換だが、この決定は外交戦略以上にトランプの個人的心理の影響が大きい>

米外交を観察していると、権謀術数をめぐらせた壮大な戦略を一貫して追求しているようにもみえる。だが個人的な経験を言わせてもらえれば、そんなケースはめったにない。

通常の政権または政府当局者にできるのは、日々直面する問題に首尾一貫した対応を取り、個々の対応や働きかけが一貫した全体像にまとまるよう願うことだけだ。それも、その当局者が有能で、何よりも幸運である場合に限る。


しかし、このささやかな一貫性すら今では隔世の感がある。

トランプ大統領は7月14日、ウクライナへの兵器供与を再開すると発表した。トランプは今年3月、軍事援助を一時停止。20万人のロシア兵が首都キーウ(キエフ)に攻め込むのを世界中が目の当たりにしたにもかかわらず、ウクライナが「戦争を始めた」と非難していた。さらにウクライナのゼレンスキー大統領にロシア側の「和平」の条件を押し付けようとした。

唐突な方針転換はトランプの特徴だが、この決定は外交戦略以上に、トランプの個人的心理の影響が大きい。しかもこの変化は数カ月しか続かないかもしれない。トランプが「勝利」を宣言し、脅迫や命令で解決できない問題から撤退するまでの話だ。

ここで今回の決定の政策目標と政治的背景を考えてみよう。まず第1に、トランプは一貫して戦争を終わらせたい、殺戮を止めたいと語ってきた。「ロシア人もウクライナ人も死んでいる。死ぬのをやめさせたい」というふうに。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:自動車業界がレアアース確保に躍起、中国の

ワールド

アングル:特産品は高麗人参、米中貿易戦争がウィスコ

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

ムーディーズ、フランスの見通し「ネガティブ」に修正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 2
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任務戦闘艦を進水 
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 9
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 10
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story