プーチンにコケにされた! トランプの自己愛がウクライナの助け舟になる皮肉

NATO首脳会議でゼレンスキーと握手するトランプ(6月25日) UKRAINE PRESIDENTIAL PRESS OFFICEーEYEPRESSーREUTERS
<トランプがウクライナへの武器供与を再開する、と発表した。ほぼ180度の方針転換だが、この決定は外交戦略以上にトランプの個人的心理の影響が大きい>
米外交を観察していると、権謀術数をめぐらせた壮大な戦略を一貫して追求しているようにもみえる。だが個人的な経験を言わせてもらえれば、そんなケースはめったにない。
通常の政権または政府当局者にできるのは、日々直面する問題に首尾一貫した対応を取り、個々の対応や働きかけが一貫した全体像にまとまるよう願うことだけだ。それも、その当局者が有能で、何よりも幸運である場合に限る。
しかし、このささやかな一貫性すら今では隔世の感がある。
トランプ大統領は7月14日、ウクライナへの兵器供与を再開すると発表した。トランプは今年3月、軍事援助を一時停止。20万人のロシア兵が首都キーウ(キエフ)に攻め込むのを世界中が目の当たりにしたにもかかわらず、ウクライナが「戦争を始めた」と非難していた。さらにウクライナのゼレンスキー大統領にロシア側の「和平」の条件を押し付けようとした。
唐突な方針転換はトランプの特徴だが、この決定は外交戦略以上に、トランプの個人的心理の影響が大きい。しかもこの変化は数カ月しか続かないかもしれない。トランプが「勝利」を宣言し、脅迫や命令で解決できない問題から撤退するまでの話だ。
ここで今回の決定の政策目標と政治的背景を考えてみよう。まず第1に、トランプは一貫して戦争を終わらせたい、殺戮を止めたいと語ってきた。「ロシア人もウクライナ人も死んでいる。死ぬのをやめさせたい」というふうに。
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