コラム

プーチンにコケにされた! トランプの自己愛がウクライナの助け舟になる皮肉

2025年07月26日(土)19時08分

ウクライナの戦争を終わらせたい本当の理由

しかし、もっと重要な動機がある。どうやらトランプはロシアのプーチン大統領にコケにされたと感じたらしい。そのためプーチンを和平合意に引き込むには、少なくとも最小限の圧力をかける必要があると判断したようだ。さもないと自分はプーチンの下僕、愚か者といった印象を強めてしまう。

第2に、トランプは孤立主義者だが、自身の内部に矛盾を抱えている。ウクライナの戦争を終わらせたいのは、そうなればヨーロッパの危機を無視できるからだ。トランプは一貫して「愚かな」戦争に手を出すアメリカの指導者を罵り、「他国の生き方や政治について説教したがる欧米の介入主義者」を非難してきた。


だが彼が平和の仲介者になりたければ当然、アメリカの外交的関与が必要になる。ところがプーチンは、ロシア側の要求に沿った和平案まで拒否している。そこでトランプは、一定の圧力をかけないとプーチンは動かないと判断したようだ。

トランプの動機はともかく、アメリカの兵器供与再開によりウクライナは前線で持ちこたえることが可能になる。戦闘で100万人以上の兵士が死傷しているロシアへの圧力はさらに強まりそうだ。

だが、トランプは解決できない問題に対し、一方的に勝利宣言して去っていく傾向がある。北朝鮮のミサイルと核開発問題では、脅しをかけたが何も達成できずに放り出した。イランに空爆を行い、核開発計画を「完全に破壊した」と宣言したが、現在はほとんど言及していない。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国工業部門利益、6月は前年比4.3%減 マイナス

ワールド

北朝鮮金総書記、「反米」で勝利誓う 朝鮮戦争休戦7

ワールド

イスラエル、ガザで支援物資の空中投下再開

ワールド

トランプ氏、スコットランドでゴルフ 欧州委員長らと
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:山に挑む
特集:山に挑む
2025年7月29日号(7/23発売)

野外のロッククライミングから屋内のボルダリングまで、心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 2
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 3
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至
  • 4
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    運転席で「客がハンドル操作」...カリフォルニア州、…
  • 9
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「電力消費量」が多い国はどこ?
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 3
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至
  • 4
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 5
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 6
    「カロリーを減らせば痩せる」は間違いだった...減量…
  • 7
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 7
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story