コラム

名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に? アメリカが日本に向ける厳しい目

2025年07月08日(火)18時00分

日本円で10円前後で入手可能

フェンタニル危機は、アメリカの歴史上最も多くの人命を奪ってきた危機と言っていい。死者数は13年には3105人だったが、22年には7万人を超えた。18~45歳の層では、今や最大の死亡原因になっている。

2000年以降、強力な鎮痛剤(オピオイド)の過剰摂取で死亡したアメリカ人は100万人を上回るが、その半分以上をフェンタニルが占めている(フェンタニルはオピオイドの一種)。アメリカのオピオイド蔓延には3つの波があった。まず90年代に処方薬の過剰摂取が広がり、次は10年代にヘロインによる死者が急増した。そして3番目が社会的ストレスが高まった新型コロナ期で、ヘロインより安価で致死率が高いフェンタニルが広がった。フェンタニルはわずか2ミリグラムという少量で死亡する可能性があり、しかも4~10セント程度で手に入る(日本円で10円前後)。


今回浮上した疑惑は、日本政府に外交上の問題を突き付けている。ここまでのところ日本政府はいわば官僚答弁に終始し、不誠実な印象を与えかねない。もっと積極的に対応に乗り出すほうがアメリカの反応は好意的になるだろう。

一方、アメリカもこの問題に対するアプローチを根本から改めるべきなのかもしれない。米共和党は、供給サイドをたたくことに力を入れる傾向がある。実際、共和党は中国政府がフェンタニルを「兵器」として利用していると批判し、ラトニック商務長官も就任前の昨年10月に、中国が「フェンタニルでアメリカを攻撃している」と述べていた。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

冷戦時代の余剰プルトニウムを原発燃料に、トランプ米

ワールド

再送-北朝鮮、韓国が軍事境界線付近で警告射撃を行っ

ビジネス

ヤゲオ、芝浦電子へのTOB価格を7130円に再引き

ワールド

インテル、米政府による10%株式取得に合意=トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子、ホッキョクグマが取った「まさかの行動」にSNS大爆笑
  • 3
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラドール2匹の深い絆
  • 4
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 8
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    海上ヴィラで撮影中、スマホが夜の海に落下...女性が…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 9
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story