コラム

名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に? アメリカが日本に向ける厳しい目

2025年07月08日(火)18時00分
フェンタニル

日本がフェンタニル原料物質の密輸の中継地に?(名古屋港) AFLO

<名古屋が中国から輸出された麻薬フェンタニルの原料物質の中継点になっているーー。日経新聞の報道とグラス駐日大使のXのポストでこの問題への関心が急速に集まっているが、日本政府のこの問題に対する危機感は薄すぎる>

日本政府は突如、過剰摂取が問題となっている強力な鎮痛剤フェンタニルの中国からの輸出を阻止しようとするアメリカの「麻薬との戦い」の当事者になった。

日本経済新聞は6月末、中国組織が名古屋に拠点をつくり、日本経由でフェンタニルの原料物質を輸出していると報道。ジョージ・グラス駐日米大使はX(旧ツイッター)にこう投稿した。「中国からのフェンタニルやその前駆体化学物質の密輸には中国共産党が関与しており、それを阻止するには国際的な取り組みが不可欠。われわれはパートナーである日本と協力することで、こうした化学物質の日本経由での積み替えや流通を防ぎ、両国の地域社会と家族を守ることができる」


しかし、日本政府の反応は官僚的なものにとどまり、フェンタニル危機に頭を悩ますアメリカにとって満足のいくものではない。加藤財務相は昨年までの6年間、日本の税関ではフェンタニルの不正輸出も不正輸入も1件も摘発されていないとコメントしている。今回浮上したのは、フェンタニルそのものの輸出入ではなく、日本が原料物質の密輸の中継地になっているという疑惑なのだが。

私がアメリカのフェンタニル問題を初めて知ったのは、2015年のことだった。地元である北東部マサチューセッツ州プリマスの女性警察官から「ビーチで死体が発見されることが増えている」と聞かされたのだ。「(フェンタニルの影響による)酸欠で皮膚が青白くなっている」。プリマスは小さな町だが、メキシコからアメリカに密輸されるフェンタニルを北へ運ぶ輸送ルート上に位置していたのだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円下落・豪ドル上昇、米関税や中銀政策

ワールド

トランプ氏「韓国は自国の国防費負担すべき」、米軍駐

ワールド

トランプ氏「中国は貿易協定で非常に公平」、習主席と

ワールド

トランプ氏、利下げ再要求 「パウエルFRB議長は直
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワールドの大統領人形が遂に「作り直し」に、比較写真にSNS爆笑
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事件の現場から浮かび上がる「2つの条件」
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 6
    トランプ、日本に25%の関税...交渉期限は8月1日まで…
  • 7
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 8
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 9
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story