戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイスラエルを待つ落とし穴
イランとイスラエルは、どちらも目標とは反対の結果を手にすることになるかもしれない。イランはヒズボラをけしかけ、ロケット弾攻撃でイスラエルに嫌がらせをさせていたが、今や体制の存続自体が危うい。イスラエルもイランの弾道ミサイル攻撃に対する対応次第では、イランが核兵器の製造に向かう事態を招く可能性が高まる。
1年前、イスラエル領内に奇襲攻撃を仕掛けたパレスチナ自治区ガザのイラスム組織ハマスは、誘拐、集団強姦、殺人の限りを尽くし、1400人以上を殺害した。その後のイスラエル軍侵攻と無数の民間人の犠牲者、ガザの破壊、数百万人の避難民発生について、ハマスには直接的責任がある。
さらにハマスの奇襲攻撃は、サウジアラビアとイスラエルの平和条約締結を遅らせ、ヒズボラをほぼ壊滅させ、アメリカとイスラエルの同盟関係を緊張させ、イスラエルを世界の多くの国々から孤立させ、イスラエルとイランを直接軍事衝突させ、中東を地域戦争の瀬戸際に追い込んだ。
複数の国の情報機関の知人たちは、イスラエルの見事と言うしかない情報工作に驚きと称賛の声を上げた。だが、優秀な工作員や外交官は知っている。戦術上の大成功は往々にして指導者の目を曇らせ、傲慢さを招き、戦略上の政策の欠陥を覆い隠し、意図せぬ損害をもたらすと。ヒズボラ自体、1982年のイスラエルによるレバノン侵攻作戦の成功が生んだ遺産なのだ。
もう1つ、彼らは知っている。ハマスとイランの宗教指導者やヨルダン川西岸のユダヤ人入植者が敵対者の生存権と「自分たちの土地」に対する彼らの権利を受け入れない限り、中東に渦巻く憎悪がイスラエルの安全保障政策とパレスチナ人の運命を縛り続けることを。
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