コラム

革命40周年のイランに、アメリカが今なすべきこと

2019年02月23日(土)16時30分

イラン革命40周年を祝う式典で演説したロウハニは反米色を鮮明に Official President Website-HANDOUT-REUTERS

<パワーバランスが変わった中東に今までの政策は通用しない。75年近く続けてきた姿勢を一新するときが来た>

今年はイランのイスラム革命40周年。2月11日には、イラン各地で記念式典が行われた。

ロウハニ大統領が首都テヘランで行った演説では、「大悪魔」と呼ぶアメリカへの非難が際立ち、核保有につながる可能性のある弾道ミサイル開発を継続すると宣言した。

アメリカとイランの間の緊張は、トランプ米大統領の就任以来、特に高まっている。トランプは、15年にオバマ前大統領の主導で欧米など6カ国がイランと締結した核合意から離脱した。

イランの核開発を15年間制限する合意を、トランプは「一方的でひどいもの」と非難し、独自の経済制裁を再開。イランによる近隣諸国のイエメンやシリアの内戦への支援や、イスラム教のスンニ派とシーア派が対立するバーレーンへの介入を阻止しようとした。

制裁はイラン社会に不安をもたらし、デモが起こり始めている。しかも、トランプ周辺からは戦争に訴えるべきだという声も聞こえる。ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は何年も前から、イラン現体制の転覆を主張してきた。

しかし両国の関係には、もっと大きな力が働いている。中東が第二次大戦後の75年間近くにわたり地域諸国の政策の基盤となってきた戦略的均衡を失ったことだ。

地域の勢力均衡が目標

その点は、最近の変化の一部を挙げるだけで分かる。イランはアメリカから40年間も敵視されているのに、勢力を拡大している。ロシアは中東に初めて堂々と乗り込み、トルコもオスマン帝国時代以来初めて地域の大国に返り咲いた。

イスラエルにとって今や脅威と言えるのは、イランからの核攻撃の恐れだけだ。パレスチナとイスラエルとの問題を解決するための「2国家共存」の構想は、もはや死に体。スンニ派が社会や政治で国境をまたぐ最大勢力でなくなったことは明らかであり、シーア派国家イランの勢力拡大はスンニ派とのパワーバランスを変えた。アメリカは今や世界最大の産油国にして輸出超過国。スンニ派の大国サウジアラビアと常に協調する必要は、もうないかもしれない。

現在の中東の状況は東アジアや中欧に似ている。第二次大戦後の大半の時期は国際秩序によって安定していたが、今ではいくつもの勢力が台頭してパワーバランスを失った。

CIAにおける私の最初の任務は35年前、イランの中東某国への進出を阻止する作戦だった。その約20年後の最後の任務は、03年のイラク戦争後にイランの反米の動きを抑え込むことだった。

そんな私のキャリアは、イランに対する平均的な見方を裏付ける。イランは今も、中東における多くの戦争や危機の要因をつくり出している。不安定で拡張主義を取り、イスラエルやアメリカへのテロやイエメンやバーレーンの反乱を支援している。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

透析・手術用の品目、「安定供給図る体制立ち上げた」

ワールド

トランプ氏、NATOへの関与に否定的発言 集団防衛

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story