コラム

対北朝鮮トランプ外交の見せ掛けの「勝利」

2018年05月10日(木)17時50分

南北首脳会談と米朝首脳会談が行われても、本質的な問題は変わらない。北朝鮮が既に核保有国になっていることはほぼ確実で、おそらく今後も核保有国であり続ける。米韓がどのような行動を取っても、真の意味で北朝鮮を「非核化」させることはできない。

北朝鮮は、韓国や中国、アメリカ、日本などと同じように国際社会の一員になる。核兵器とミサイルの実験を一時停止し、何らかの査察を受け入れることと引き換えに、韓国から援助を受け、アメリカや国際社会による制裁の緩和も取り付ける可能性も高い。韓国やその他のアジア地域における米軍のプレゼンスも、少しは縮小しそうだ。

では、誰が「勝者」なのか。北朝鮮の立場が強まることはほぼ間違いない。韓国も、緊張が和らぐという恩恵を手にする。

中国は、蚊帳の外に置かれまいと慌てて動いただけで実質的には何もできず、北朝鮮にとっての中国の重要性を念押ししただけだった。それでも、一見すると影響力が弱まりそうに思えるかもしれないが(実際は必ずしもそうではない)、戦略的地位は次第に強まるだろう。

一方、日本は、アメリカが国益のためには手段を選ばないことを――少なくともそのような姿勢を見せるために何でもすることを――思い知らされる。日本の防衛に対するアメリカの関心も少し弱まるだろう。

では、アメリカにとってはどうか。アメリカが得る「勝利」は、おおむねレトリックとパフォーマンスの領域にとどまる。長い目で見れば、国際社会でのアメリカの戦略的地位は弱まる。トランプの推進する「政策」(と呼ぶに値するかどうかはともかく)は、ほぼあらゆる分野で同様の結果を招いている。

しかも、以上に記したのは、数ある可能性の中でも最善のシナリオだ。これ以外のシナリオになれば、破滅的な戦争が現実になる危険性が上昇することになる。

<本誌2018年5月15日号掲載>

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プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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