コラム

リベラルは何故こんなにも絶望しているのか~「保守」にあって「リベラル」に無いもの

2021年09月22日(水)15時13分

勿論彼らは保守系の国会議員や地方議員にも訴えたが、保守系論壇誌ですら「昭和の日改定運動」は優先度が低く、そこまで注目されなかった。40歳を過ぎたいい歳のおじさんが、損得を度外視して、身内からも注目されることなく、コンビニのコピー機で刷った一枚10円のビラを雨の日も風の日も、台風の日も配布するとき、その主張が正しいか正しくないかを別として私は涙が出た。これが草の根の保守運動というやつであった。彼らの声が届いたかは判然としないが、結果として「みどりの日」は、彼らの望む通り「昭和の日」になって現在を迎えている。

くだんの朝日新聞における岡田憲治氏のインタビューには、現在のリベラル派が認識している支持層を「上顧客」とする記述がある。自分たちの思想への支持層を「客」と呼んで憚らない岡田氏の世界観には賛否があるだろうが、少なくとも保守運動にはそういった意識は無かった。「昭和の日改定運動」に携わった保守系の活動家のほとんど全部は、自らへの支持者を「客」とは見做さず、「同志」として歓迎した。

客観的にみて、その主張が如何に政治的に偏っていようとも、彼らは自らの主張が絶対に正しいと信じ、多数派工作を行わなかった。なぜ行わなかったのかと言えば、自分たちの主張は絶対に正しい。いつかは届くと信じたので、多数派工作を行う必要性を感じなかったからだ。彼らは愚直なまでに自らの信念を貫き通し、その活動で出会った人々を「客」という周縁に追いやることをせず「同志」として平等に連帯した。

これが「保守」にあって「リベラル」に無い根本精神ではないのか。「上顧客」「固定客」などという、いわば見下した他者への存在がある限り、リベラルの復権は絶対にない。強固な保守は、過去にも、現在にも、未来でも、「同じ志を有する者は同志として見做して平等に扱う」をその根本精神とする。間違っても「客である」等とは言わない。そして絶対に信念を曲げない。

「自分たちが受け入れられないのは、メディアのせいであり、反日勢力の陰謀であるから、自分たちはまちがっていない」という直進性を有する。その点リベラルは、たった一回の実質的政権交代に味を占め、それが再現できなくなると「私たちが間違っていたのではないか」という自虐に走る。これがリベラルが保守に劣後する最大の理由だ。今こそマックス・ウェーバーの故事を思いだし、たった一度の挫折にひるむことなく自身の主張を剛毅不屈に貫徹してもらいたい。それができず、単に主義のない「多数派工作」を展開し、自らの支持者を「客」と蔑むなら、リベラルに未来などないのではないか。


※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

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プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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