コラム

「靴投げ記者」また逮捕の理由

2011年02月25日(金)16時25分

 08年にイラクを訪問したジョージ・W・ブッシュ米大統領(当時)に靴を投げつけて逮捕されたイラク人ジャーナリスト、ムンタゼル・アル・ザイディがまた捕まった。ABCニュースによると、今度はバグダッドで予定されるエジプト式の反政府デモを支持しようとしたためだ。


 ムンタゼル・アル・ザイディは、首都バグダッドのスンニ派地区アブダミヤのアブ・ハニファ・モスクの前で記者会見を開こうとしているところだった。そこへイラク国軍部隊がやってきて、彼を連れ去った。

「連行するよう命令を受けた」と、部隊を率いる陸軍将校はザイディに言った。最初ザイディは逮捕状を要求し抵抗したが、最終的には兄弟のダルガンと共に陸軍のピックアップ・トラックに乗せられた。

 ダルガンが逮捕前にAFP通信に語ったところでは、ザイディは、25日金曜日にバグダッドで大規模な反政府集会を開こうという呼びかけに賛同する予定だった。


■世界に広がった抗議のジェスチャー

 前回投獄されたときは、電気ショックや水責めなどの拷問を受けたと、ザイディは言っている。靴を投げるのは、イスラム教では最大の侮辱。ザイディの事件以降「靴投げ」は世界に広がり、回りまわって彼自身も被害者になったことがある。

 抗議の靴投げがあまりに一般的になったので、英エコノミスト誌は、アラブ社会の不満度を測る指標として「靴投げ指数」を開発したほど。最近では、イスラム教徒とは犬猿の仲のイスラエル右派さえ靴投げを真似るようになっている。

 最近のザイディは、レバノンのベイルートに住みイギリスのアラビア語紙アル・クドス・アル・アラビーにコラムを連載していた。イラクに帰ってきたのは、中東地域に反政府デモが広がったからだ。今回のザイディの逮捕に抗議するにはどうしたらいいか、支持者ならもちろん知っているだろう。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年02月24日(木)14時20分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 25/2/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ

ワールド

野村、今週の米利下げ予想 依然微妙
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story