コラム

中国富裕層が恐れる「豚の虐殺リスト」

2009年06月18日(木)01時16分

 黄光裕(ホアン・コアンユィ)は昨年10月には、中国で2番目の金持ちだった。中国の家電量販チェーン最大手、国美電器の創業者で、「価格キラー」として知られていたが、11月に突然姿を消す。報道も、彼は「問題を起こした」と伝えるのみ。

 黄は贈賄と株価操作の容疑で中国当局に拘束されており、しかもドイツのシュピーゲル誌によればそれは、中国共産党の大規模な腐敗撲滅キャンペーンの一環だという。


 農民の子として生まれ、小さなラジオ商人から1350店舗を展開する有力企業のトップにのし上がった黄の転落で、道連れになる政界の犠牲者も増えている。

 今年始めには、鄭少東(チョン・シャオトン)中国公安部部長補佐兼経済犯罪偵察局局長と同局副局長の相環珠(シアン・ホアイチュー)が逮捕された。中国メディアの報道によれば、黄から賄賂を受け取った疑いだ。

 4月には、中国の重要な輸出拠点である広東省の共産党幹部2人が汚職容疑で逮捕された。

 中国国家主席で共産党総書記の胡錦濤(フー・チンタオ)は、この機会に党から腐敗を一掃し、10月の建国60周年に備えたい考えのようだ。これは、世界経済危機のあおりで苦しんでいる「世界の工場」を根本的に改革する機会でもある。


 こうした腐敗との戦いが、国慶節(建国記念日)向けのジェスチャー以上の成果を上げるまで続くかどうかはわからない。だが、中国の富裕層はいつ自分が標的になるか恐れるあまり、米フォーブス誌の中国富豪ランキングは今や「俗語で『豚の虐殺リスト』と呼ばれている」という。お金があるのも痛し痒しだ。

──ジェームズ・ダウニー


Reprinted with permission from FP Passport, 18/6/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スーダンの準軍事組織RSFが休戦表明 国軍は拒否

ワールド

銅相場は堅調、供給動向と米在庫を注視

ビジネス

米当局、コムキャストに罰金150万ドル 23万人超

ビジネス

赤沢経産相、ラピダス「国策として全力で取り組む」
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story