コラム

「最後のISS」から帰還...大西卓哉さんに聞いた、宇宙でのリーダー論と「月挑戦」への情熱

2025年10月17日(金)21時25分


ISS船長経験について大西さんは謙虚に語ります。一方、記者会見では、アメリカやロシアとの国際チームの中で日本人が船長を任されたことについて、大西さん油井さんと日本人が約1年間ISSに居続けとなることも含めて「(宇宙開発における)日本のプレゼンス向上に貢献できたのではないか」と振り返り、その意義を強調しました。

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ISS滞在中、実験をする大西さん(JAXAのYouTubeチャンネルより)

──大西さんは今回の宇宙滞在前にやってみたいこととして、船外活動を挙げていらっしゃいました。残念ながら今回は機会がなかったのですが、素人考えだと「船長が船外活動に従事している時にISS内で何かあると困るから、船長に任命されると実は船外活動する人には選ばれないのではないかな?」などと思ったのですが。

大西 それは直接的には関係ないと思います。ただ、ミッション中に各々のクルーに「個人の見せ場」のようなものは作りたいと思っていました。私は船長という役割を担わせていただいたので、船外活動は他のチームメンバーにまずは機会を与えたいというのはありました。

だから、希望聴取というか、NASAから「船外活動はこのメンバーで行こうと思うのだけれど」と言われた時に、ニコルさんという若手の女性の名があがったので、彼女には絶対に船外活動の経験を積んでもらいたいと思ったので、その選択を推すように対応しました。


──そこで「いや、ちょっと、俺も経験しておきたいから船外活動をやらせてくれ」みたいなことは......。

大西 自分はそういうタイプではないんですよね。そこでガンガン行ければ取れるのかもしれないですけど、そこまでしようともしたいとも思わないので。

──では、次の機会に期待ですね。大西さんにとって宇宙飛行の次の機会というと、ゲートウェイ(月軌道上に提案されている宇宙ステーション)や月面でということになるのでしょうか。

大西 私はそのつもりです。国際宇宙ステーションのミッションは、自分は今回が最後だと思っています。次はもっと別の場所で、自分のスキルを活かしたいですね。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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