コラム

「最後のISS」から帰還...大西卓哉さんに聞いた、宇宙でのリーダー論と「月挑戦」への情熱

2025年10月17日(金)21時25分

──船長はISS全体の安全に対して責任を持つ立場ですが、今回の滞在中、安全面でヒヤッとした出来事はありましたか。

大西 本当に1分1秒を争うような判断の場面というのは、今回は幸いなことになかったですね。一度、火災警報が鳴ってしまったことがありましたけど、最初の数分程度で問題ないことが分かりました。

──クルー同士で言い争いになったときの仲裁も、最終的に船長の役割だったりするのですか。

大西 それはたぶん、誰でもやるんじゃないかな(笑)。幸い、そういうこともなかったですね。どうしても人間同士なので意見が違うことはありますけれど、そこはみんな大人なので、話し合いで解決していました。


──変なことを聞いて失礼いたしました(笑)。船長になられたことで、大西さん自身に新たな気づきはありましたか。

大西 「自分がリーダーだから」と気負うことなく、「自然体でやること」がすごく大事だなと思いました。

どうしても3カ月半という長期間、リーダーという役割を担っていく上で、ずっと肩ひじを張って「俺が何とかしなきゃ」と構えているのって、たぶんすごく疲れると思うんですよね。そうではなくて、あくまで「チーム全体で自分にできることをやる」と考えられたのが、一番良かったところだと思います。

真摯に自分の職務に向き合っていると、結局そういう姿勢を周りの人は見ているので、信頼されるきっかけになりました。最終的にクルーメンバーに「お前がリーダーですごくやりやすかった」というコメントをもらうことができたので、やりがいも手応えもありました。

──大西さんは以前、宇宙飛行士候補者試験を振り返った時に「他の人が優等生的に振る舞いがちななか、『飾ってても仕方ないから、地を出そう』と思った」とおっしゃっていましたが、「それが今でもずっとつながっているのだな、大西さんらしいな」と思いました。

大西 そうですね。無理をして「自分を背伸びする」、自分でない自分を演じて何カ月も過ごすのでは、たぶんきついと思います。

──そんな姿を見ている周りも、ピリピリというか、ちょっと硬くなってしまいそうですね。

大西 今回は、周囲のクルーも「お前はリーダーなんだから」と全部押し付けてくることはまったくありませんでした。一人ひとりがきちんと「自分が解決すべき問題を解決する」という感じでした。だから、船長は本当に全体的な取りまとめ役でした。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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