コラム

「最後のISS」から帰還...大西卓哉さんに聞いた、宇宙でのリーダー論と「月挑戦」への情熱

2025年10月17日(金)21時25分
大西卓哉宇宙飛行士

大西卓哉宇宙飛行士(10月3日、JAXA東京事務所) 筆者撮影

<ISSで日本人3人目となる船長任務を全うし、地球に帰還した大西卓哉宇宙飛行士。宇宙で意識していたリーダー像や「おあずけ」となった船外活動についてなど、率直な心境を独自インタビューで聞いた>

ISS(国際宇宙ステーション)第72/73次長期滞在クルーとして146日間のミッションに臨んだJAXA宇宙飛行士の大西卓哉さんは、8月の地球帰還後、NASA(アメリカ航空宇宙局)での約1カ月半のリハビリを終えて一時帰国しました。

大西さんの宇宙滞在は2016年以来、9年ぶり2回目です。宇宙への再訪までの期間は、ISSの「きぼう」日本実験棟の運用管制チームをとりまとめるフライトディレクタを務めるなど、地上と宇宙をつなぐ役割で活躍しました。


今回の宇宙滞在では、後半の73次で日本人として3人目(※)となるISS船長も任され、ミッション達成に向けて安全やコミュニケーションに配慮しながらクルーを率いました。

※14年の若田光一宇宙飛行士、21年の星出彰彦宇宙飛行士に次ぐ

宇宙でのリーダー論や、宇宙でやりたいことの1つに挙げつつも残念ながら「おあずけ」となってしまったEVA(船外活動)について、独自インタビューで大西さんの率直な心境を聞くことができました。3日に行われた帰国会見の内容も交えて、等身大の大西さんを紹介します。

◇ ◇ ◇

──大西さんはどんなタイプの船長だったのですか。事前に「こういう船長であろう」と考えて、それを実行されたのでしょうか。

大西 自分は「先頭に立ってチームを引っ張っていくようなタイプ」ではないと思っていたので、「縁の下の力持ちタイプ」の船長になろうとしていましたし、実際にそうだったと思います。

──記者会見では、大西さんからロシアのセルゲイ・リュジコフさんにISS船長が引き継がれた後、大西さんたちCrew-10がISSから離脱するまでの「グレーな期間」について役割分担をどうしたかについて説明されていました。
ISS指揮権は交替しても、新たにISSにやってきた油井亀美也さんたちCrew-11を含むアメリカ側については、引き続き大西さんが責任を持って取りまとめると意思表明したそうですね。Crew-10とCrew-11が混在するイレギュラーな状況下、ビシッと対応を決めてリーダーシップを発揮されたのだなと感じました。

大西 誰がどういう状況で指揮権を持つかをクリアにすることが重要なので、あのケースではそれが一番シンプルで分かりやすいパターンだったと思います。そこに関しては、決断に全然迷いはなかったですね。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、成長支援へ金融政策を調整 通貨の安定維

ビジネス

スイス中銀、リオ・ティント株売却 資源採取産業から

ワールド

ドイツ外相の中国訪問延期、会談の調整つかず

ビジネス

ヘッジファンド、AI関連株投資が16年以来の高水準
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story