コラム

7つのキーワードで知る「土用の丑」とウナギの今──完全養殖に高まる期待と「シャインマスカットの反省」

2025年07月19日(土)10時00分

ニホンウナギは14年にIUCN(国際自然保護連合)レッドリストの絶滅危惧IB 類(絶滅の危機が高い種)に指定された。トキと同じカテゴリーだ。しかし、食味の良いニホンウナギは需要が高いため、養殖に必要なシラスウナギは密猟されることもあり、資源の保全が課題となっている。

シラスウナギがこのまま減少すれば、天然ニホンウナギだけでなく、天然の稚魚を用いる養殖ニホンウナギも食べられなくなる日が来るかもしれない。


一方、完全養殖により人の手で受精卵からシラスウナギを作成し大量生産することができれば、海洋資源を減らすことなく市場の安定化が期待できる。同時に日本の食文化を守り、海洋資源の保全にも貢献できる可能性がある。

7.ウナギ完全養殖技術の拡散に関係各所が慎重な理由は?

IUCNレッドリストでは、ヨーロッパウナギが絶滅危惧IA類(絶滅の深刻な危機)、ニホンウナギとアメリカウナギが絶滅危惧IB類に挙げられている。

日本のウナギの完全養殖技術が世界的に広まれば、3種の食用ウナギの絶滅危機にいち早くアクションを起こせそうだ。しかし、水産庁や養殖関係者は慎重な態度で臨んでいる。「第二のシャインマスカット」にしないためだ。

糖度が高く皮ごと食べられるシャインマスカットは、2000年代初頭に登場するとすぐに大人気となり、高級ブドウの代名詞となった。

このブドウは日本で品種開発されたもので、農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)が33年をかけて生み出した。ところが、06年に日本で品種登録したものの、海外での品種登録を行わなかったため、ライセンス料などが支払われないまま無断で中国や韓国に種苗が持ち出されて栽培された。その損害は年間100億円とも試算され、低品質な海外産シャインマスカットの存在も問題になっている。

政府関係者は「完全養殖ウナギの社会実装は、技術資産保全をしっかり対策したうえで普及・活用していかなければならない」と話している。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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