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7つのキーワードで知る「土用の丑」とウナギの今──完全養殖に高まる期待と「シャインマスカットの反省」
5.ウナギの完全養殖はどこまで進んでいるの?
ウナギの完全養殖とは、人工授精で受精卵を作り、孵化した赤ちゃんウナギを成魚まで育て、さらに次世代を誕生させることだ。
研究は古くから行われ、1973年に北海道大学が世界初のウナギ(ニホンウナギ)の人工孵化に成功している。 2002年に水産総合研究センター(現・水産研究・教育機構)が人工授精で得た卵をシラスウナギにまで育て、10年に完全養殖に成功した。
今月12日に行われた東アジア鰻学会の一般向けシンポジウムで、ウナギの完全養殖について講演した水産研究・教育機構の須藤竜介氏は「人工種苗の生産技術の確立に向けて、①産卵から孵化までの生産技術の開発、②成長・生残の良好な飼料の開発、③生産性の高い飼育水槽の開発、④省力化に向けた自動給餌システムの開発、⑤優良家系の育種という5つの研究課題を主に実施した」と説明した。
たとえば、①では、ウナギは飼育環境下では性成熟しないため、より効果的な不妊治療を行うために従来の異種生物のホルモンからウナギ自身のホルモンを使えるよう遺伝子組換えで作成したり、②では従来はサメ卵飼料に頼りきりで枯渇の心配があったため鶏卵に脱脂粉乳や魚粉を加えた配合飼料を開発したりしたそうだ。また、生産コストを下げるために飼育水槽の大型化や人力に頼らない飼育法にも取り組んだという。
山田水産(大分県)は、水産研究・教育機構の依頼で完全養殖のシラスウナギを成魚までの育成する実験に、民間業者初の立場で18年から協力している。近年は年間約1万尾の完全養殖ウナギの生産に成功している。
6.なぜウナギの完全養殖の研究が必要なの?
ニホンウナギは大規模な回遊を行う魚類だ。生まれ故郷(産卵場所)はマリアナ諸島西方海域(グアム島沖)で、北赤道海流・黒潮を経て約3000キロの旅をして日本や東アジアまでやってくる。
卵から孵化したニホンウナギは幼生の間は葉っぱのような形をしており、日本近海に来る頃にはウナギのような細長いシラスウナギになる。さらに成長して日本の河川などで過ごした後、産卵のために再度、グアム島沖に戻っていく。
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