コラム

未来予想図の答え合わせ 100年前、50年前、そして50年後はどんな世界に?

2022年01月11日(火)11時30分

健康カプセルは、多機能のミニプライベートルームです。球形のカプセルの中に、ベッドにもなる電動リクライニングシートを中心に、テレビ、ステレオ、テレビ電話、冷蔵庫、調光装置、空調装置、ミニテーブルなどがセットされていました。日本初のカプセルホテルの開業は1979年ですから、カプセルホテルを先取りしているだけでなく、実際よりも盛りだくさんな機能がついた装置でした。

同じく大阪万博に出展した三菱未来館(三菱グループ提供)のテーマは、「50年後の日本 陸・海・空」、つまり2020年の未来予想でした。展示で紹介された未来予想のいくつかを、2022年時点で◯(実現済み)、△(一部実現済み)、×(未実現)に分けてみましょう。

◯世界中のテレビ中継が見られる。
◯教育の国際的交流が広がり、留学も簡単にできるようになる。
◯淡水魚の養殖技術が発達する。
◯未来住宅の室内には、壁掛けテレビ、ホーム電子頭脳、電子調整器などが普及する。

△人工臓器は健康な体の一部として活躍する。
△家事はすべて機械がやるため、主婦は電子チェアに座ってボタンを押すだけとなる。
△会社は24時間業務を続けるが、人間の働く時間は1日4時間になる。
△肉体労働は完全に姿を消す。

×ガンは克服され、交通事故の時以外は手術が不必要になる。
×稲作は減少して、酪農に重点を置く。
×グライダー操作や海底散歩が、一般的で人気のあるスポーツとなる。
×プールや自家用ヘリコプターが一般家庭に普及する。

情報化社会とグローバリゼーションは、ほぼ予想通りに到来しました。しかし、家事やビジネスの完全オートメーション化までは達成できませんでした。医学も、疾病の根絶にはまだ時間がかかりそうです。さらに、世界的な人口増加や起因する深刻なタンパク質不足(タンパク質危機)や菜食主義の台頭、環境問題によって酪農が衰退することは、50年前は予想できなかったようです。

30億人がサハラ砂漠並みの気候下で暮らすことに

続いて、現在、専門家によって提唱されている約50年後の2070年の未来予想を見てみましょう。

博報堂生活総合研究所の未来年表によると、2070年頃の世界の人口は約90億人で、その後は減少すると予測されています。国連はもともと「2100年に109億人になるまで、世界人口は増え続ける」と発表していました。けれど2020年に米ワシントン大の研究チームは、「世界人口がピークを迎えるのはもっと早く、2064年に97億人がピーク」と予測しました。ピークが早まったのは、想像を上回るペースで世界的に少子化が進んでいることが主な原因です。

50年後の世界では、地球の平均気温は、温暖化のため、現在よりも1.9~3.4度上昇しています。気温上昇によって、大豆やトウモロコシは収量が減少すると予測されています。南極では解氷が進み、世界の海面は2000年代と比べて0.5m上昇します。さらにオランダのワーゲニンゲン大の研究チームは、「気候変動への対策なしでは、世界人口の3分の1(30億人)は現在のサハラ砂漠と同じくらい暑い地域に住まざるを得なくなる」と警鐘を鳴らします。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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