最新記事

未来予測

世界を変えるテクノロジー、「台風の制御」実現は遠い未来ではない【未来予報図02】

2022年3月9日(水)12時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
台風

1xpert-iStock.

<台風の目に氷をまいて勢力を弱めれば、風速を3m/s減少させるだけで1800億円もの経済損失を軽減できる。それだけでなく、台風エネルギーを電力に変えることも可能だ>

テクノロジーは驚くべきスピードで「進化」している。今も世界中の企業が、SFを思わせるような未来のテクノロジーを開発している。そうしたテクノロジーによって未来のビジネスがどう変わっていくかは、実はある程度「予測」できる。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)で人工衛星の開発に携わっていた齊田興哉氏は、多方面の最新テクノロジーに精通しており、テクノロジーの発展と、それによって起こるビジネスモデルの変化を知り、仕事やキャリアに生かしてほしいと話す。

ここでは、齊田氏の新刊『ビジネスモデルの未来予報図51』(CCCメディアハウス)から3回にわたって抜粋する。パワースーツから臓器チップ、空飛ぶタクシー、見たい夢を見る装置まで、51の最新テクノロジーとそれらの「ビジネスの未来予報」を分かりやすく解説した1冊だ。

抜粋の第2回は、台風をコントロールする技術について。

※第1回:2030~2040年には、犬・猫との双方向の会話が実現する【未来予報図01】
※第3回:開発が進む最新軍事テクノロジー「昆虫サイボーグ」【未来予報図03】

◇ ◇ ◇

台風の目に氷をまけば、勢力が弱まる

将来的には、台風を制御できるようになるだろう。では、台風を制御するというのはどういうことなのか見ていこう。

毎年何度も、日本に上陸する台風。勢力によっては甚大な被害をもたらす。自然には太刀打ちできないと考えてきたのが、これまでの発想だが実は、海上で発生した台風の勢力を弱めたり、消滅させたり、進路を変更させたりできる取り組みがある。

一昔前に台風制御に関する実験がおこなわれ、成功している事例がある。1969年、米国の気象局は、ハリケーンの目の外側の雲に、ヨウ化銀(ヨウ化銀は、氷の結晶構造に似ているため、大気中に散布すると、大気中の水が結晶化し、それを種に雲が発生するため、人工雨を降らせるのに使われている。ヨウ化銀には毒性があるが、人工雨に使用されるのに人体に影響を与える量は使われていない)を飛行機でまき散らす実験をおこなった。

実験の結果、ハリケーンの最大風速が50m/sから35m/sになった。しかし、実験に適した熱帯低気圧の数が少なかったり、実験のせいでハリケーンの進路が急に変わってしまうのを懸念する意見があったり、各国の利害調整などに苦労したりして、これ以上進展しなかったというのが実情のようだ。

2021年、台風を制御して、勢力を弱めたり、発電したりできるテクノロジーを開発すべく、横浜国立大学台風科学技術研究センターが設立された。台風を正確に観測する技術や、数値シミュレーションで正確に予測する技術、台風のエネルギーを電気に変える技術、これらのテクノロジーを社会実装する技術などを研究している。

今までできなかった台風の制御ができるようになった要因は、数値シミュレーションなどによる台風の「効果判定」技術が発展したことが挙げられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ平和サミット開幕、共同宣言草案でロシアの

ワールド

アングル:メダリストも導入、広がる糖尿病用血糖モニ

ビジネス

アングル:中国で安売り店が躍進、近づく「日本型デフ

ビジネス

NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆発...死者60人以上の攻撃「映像」ウクライナ公開

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 5

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 6

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

  • 10

    「ノーベル文学賞らしい要素」ゼロ...「短編小説の女…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中