最新記事

カルチャー

ビール麦とは? 若ビールとは? 意外と知らないビールの造り方を解説

2022年3月4日(金)18時50分
文:高須賀 哲 写真:恩田拓治

『Pen+ 暮らしを彩る、ヱビスのある時間。』より

<最初の工程は「製麦」。その後「仕込」でホップを加え、「発酵」で酵母を添加し......。ビール造りの基本を知れば、130年以上にわたって本物のおいしさを追い求めてきたヱビスビールのこだわりを、より深く理解できるようになる>

(※この記事は、日本を代表するプレミアムビール、ヱビスのこだわりや歴史、楽しみ方を1冊にまとめた『Pen+(ペン・プラス)暮らしを彩る、ヱビスのある時間。』より)

主原料の大麦を加工する「製麦」

ビール造りは、主原料である大麦をビール造りに適した状態にする工程「製麦」から始まる。大麦は、穀粒が2列に並んだ二条大麦と6列に並んだ六条大麦の2種類があるが、通常、ビール造りで使われているのは、ビール醸造用につくられた二条大麦で、粒が大きく、でんぷんの含有量が多く別名「ビール麦」と呼ばれている。収穫されたばかりの大麦は休眠しているが、時間が経てば目を覚まし、発芽できる状態になる。その大麦をふるいにかけて大きさを揃え、麦に水を与えて発芽を促すのが「浸麦」という工程だ。

浸麦が終わった大麦は発芽を開始する。すると「緑麦芽」と呼ばれる状態になり、自ら酵素で胚乳中に溜めていたでんぷんやたんぱく質などの栄養分を分解し始める。そして、硬かった粒が指で潰せるほどに柔らかくなる「溶け」と呼ばれる変化を起こす。この「溶け」のさじ加減もビールの味に大きく影響するのだ。

penebisu20220304-pic3.jpg

『Pen+ 暮らしを彩る、ヱビスのある時間。』より

続いては、乾燥と焙煎により発芽を止める「焙燥」の工程だ。緑麦芽には、後の仕込工程で必要になる酵素が多く含まれているため、酵素の働きを失わないように、最初は低めの温風で緑麦芽を乾かす。次に麦芽独特の色や香りの成分をつくるために、80℃程度の熱風を送り込む。これにより、水分が減り、長期保存ができるようになる。焙燥が終わるとすぐに渋味や雑味の原因になる麦の根を専用の装置で取り除き、その後1ヶ月程度、仕上がった麦芽をサイロで寝かして熟成させることで製麦は完了する。

penebisu20220304-chart.png

『Pen+ 暮らしを彩る、ヱビスのある時間。』より

発酵の下準備を行う「仕込」

次の「仕込」の工程で最初に行うのが麦芽の粉砕だ。でんぷんが糖に効率的に分解されるように、麦芽をローラー式のミルで粉砕する。ただし、細かくしすぎると後のろ過の工程に時間がかかったり、皮に含まれるタンニンなどが渋味やエグ味を出してしまうため、適度な粗挽きにする必要がある。

penebisu20220304-pic4.jpg

『Pen+ 暮らしを彩る、ヱビスのある時間。』より

それが終わると、「糖化」の工程に移る。麦芽のでんぷんはグルコースがたくさんつながった状態になっているが、そのままでは酵母が細胞内に取り込むには大きすぎるし、糖に分解する酵素も働きにくい。そこで、仕込釜に入れてお湯で加熱処理をして糊状に、さらに液状になるまで加工するのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB、仏国債の臨時購入を検討せず=政策筋

ワールド

イラン、核開発計画に警告したG7声明を非難

ビジネス

米資産運用バンガード、マスク氏報酬案に賛成 テスラ

ワールド

フランス全土で極右政党の国民連合に対する抗議デモ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

  • 3

    顔も服も「若かりし頃のマドンナ」そのもの...マドンナの娘ローデス・レオン、驚きのボディコン姿

  • 4

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 5

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 6

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 7

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 8

    なぜ日本語は漢字を捨てなかったのか?...『万葉集』…

  • 9

    サメに脚をかまれた16歳少年の痛々しい傷跡...素手で…

  • 10

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 7

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中