最新記事

日本企業

巨額負債から回復するも高くついたゴーン流経営 日産に残された身勝手と不正のツケ

2019年3月21日(木)17時21分

巨額の負債で瀕死状態にあった日産自動車をⅤ字回復させたカルロス・ゴーン前会長。写真は6日、都内で撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

巨額の負債で瀕死状態にあった日産自動車をⅤ字回復させたカルロス・ゴーン前会長。しかし、かつて同氏のカリスマ的経営手腕に日産社員が抱いた絶大な信頼はすでに消え、同社内にはむしろゴーン氏の強引な経営への疑念と批判が渦巻いている。

救世主として迎えた敏腕経営者を刑事告訴するに至った日産社内の変化はどのように広がったのか。ロイターの取材の中で、その重要な伏線のひとつが2007年に起きた出来事にあったことがわかった。

機関決定直前の変更要請

同年9月、インドにおける販売・マーケティングのパートナー会社の選定をめぐり、ゴーン氏は周囲を驚かせる行動をとった。事情に詳しい4人の同社関係者によると、パートナー会社の最終候補になっていたのは、自動車関連ビジネスなどを展開するインドの企業グループ、TVS。しかし、TVS採用を機関決定する執行委員会の開催日の2日前にゴーン氏は突然、別の会社であるホーバー・オートモーティブ・インディアを自身の候補企業として後押しする動きに出た。

それを受け、日産のある幹部は執行委員会を準備していた社員らに、TVSではなく、ホーバーを望むとするゴーン氏の意向を文章で送付。ホーバーの選定が確実になったという。

ホーバーの創業者で会長のモエズ・マンガルジ氏は、ゴーン前会長が家族ぐるみで付き合いがある人物だった。しかも、ホーバーはパートナー会社の候補のひとつにはなっていたものの、自動車取引やマーケティングでの経験が不十分と判断され、最終候補からはすでに外されていたという。

ゴーン氏が自分の友人を助けるために日産に負担をかけた一例だーー。同社の関係筋は日産社内の受け止め方をこう表現した。ゴーン氏がこれによって個人的な恩恵を受けたという証拠はないが、同氏に対する日産内部の疑惑調査の中で、この時のゴーン氏の言動は深刻な問題事例として浮かび上がった。そして、日産の一部役員にとって、この出来事が自社を破綻の瀬戸際から救った人物の底意に疑問を抱く決定的な瞬間になった、と社内関係者は振り返る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中