コラム

トランプ大統領、新型コロナウイルス感染でも株価は暴落しない

2020年10月03日(土)12時30分

選挙戦の最終版で、現地入りして支持者と直接接触して盛り上がることが、最後のトランプパワーだったのが、その戦略が完全に崩れた。しかも、バイデンをスリーピージョーとか、60メートル離れていても大きなマスクをつけて、いつもおびえて地下室にこもっていると、弱虫を揶揄していただけに、自分もこもらざるを得ないのは、盛り下がり、かっこ悪い。

さらに、感染経路や経緯が悪い。

31歳、元ファッションモデルの女性スタッフ、ホープ・ヒックス大統領顧問の感染判明により、周辺が検査したところ、トランプだけが陽性(そこからメラニア夫人へ)というのが最悪だ。このスタッフが超美人で、いかにもトランプ好み、そして、トランプよりももっと近しい関係で、接触も頻繁だったはずのトランプの娘イヴァンガもその夫のクシュナーも陰性だったのが、変な憶測を盛り上げ、有権者への印象は悪い。

ゴシップや家庭内部の争いはともかく、公的にも、スタッフの感染が判明した後でも、選挙活動を続け、あちこちに行っていた、そのときにマスクすらつけていなかった、という大問題が存在している。これへの攻撃は止まないだろう。

そして、もともと選挙予測は接戦で、トランプが追い上げてきたと言っても、いまのところはまだはっきりとバイデン優勢、しかも、第一回討論会で、バイデンがミスをしなかったことで、再度差が開いた直後のことであり、かなり流れは決定的になったのではないか。

大統領選直後から崩壊か

しかし、トランプが負ける確率が高まったのに、株価がそれほど下落しなかったのはなぜか。解釈は2つあり、もともと、第一回討論会でトランプの負けは織り込み済みで、負けること自体はナッシングニューだったということだ。

ただし、これには反論があり、第一回討論会の後、目に見えて株価は下落していないのではないか、ということだ。

私は、トランプ敗戦で株価が下がるのは、実際に投票結果が出たときに、市場は一気に織り込む、あるいは、その直前、投票日直前ぐらいから仕掛けが始まるのではないか、と予想する。そのほうがわかりやすい仕掛けだからだ。

さらに、もうひとつの解釈は、大統領選は株価にとって、いまや重要でない、ということだ。だから、何が大統領選挙で起きても、あまり反応しないということだ。

なぜなら、米国株式市場は大きなバブルの崩壊局面にあり、どうやって静かに売り逃げするか、という有力投資家同士のだましあいのステージだから、あまりことさらにマーケットが騒ぎになるのは、ほとんどの有力投資家にとってマイナスだからだ。

そして、私は、このバブルが、11月3日の大統領選挙の翌日から一気に崩壊するのではないか、と考える。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、スカイダンスとの協議打ち切り観測 独

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story