コラム

アマゾン破竹の勢いと、忍び寄る独禁法の影

2017年08月23日(水)10時16分

いずれ独禁法の調査の対象に

同教授は、アマゾンがここまで強くなれば、独禁法違反の疑いで政府の調査を受ける可能性が高いと指摘する。アマゾン自身もその可能性を認識しているようで、ロビイストを多数雇用したという話が聞こえてくる。

米政府の高官からも、アマゾンをけん制するような発言が出始めている。Steven Mnuchin財務長官は7月の公聴会で、アマゾンのサイト上のサードパーティの多くが消費税を納付していない問題に関し「現政権内で慎重に検討を続けており、近々なんらかの方針を決めることになるだろう」と語っている。

米政府のアンチアマゾンの急先鋒は、ドナルド・トランプ大統領自身だ。大統領になる前から選挙演説で「もしわたしが大統領になったら、アマゾンにとってはやっかいなことになるだろう」と語っていたし、7月には複数回に渡ってツイッターに「インターネット税を納めていないアマゾンの(ベゾス氏が社主を務める)Washington Post紙は、フェイクニュースだ」などと投稿している。8月16日にはツイッター上で「アマゾンは、税金を払っている小売業者に危害を与えている。自治体も被害を受けている。多くの職を奪っている」と非難している。

映画サイトNetflixの役員のRich Barton氏は、前職のMicrosoft時代に司法省の調査を受けた経験を持つ。Microsoftに対する調査では、一時は同社を分社化する案も浮上したといわれる。取り調べは厳しく、司法省調査のせいでMicrosoftが弱体化したという説もあるほどだ。Barton氏は独禁法調査を「まったく楽しくない、非常に厳しい体験だった」と形容している。同氏は、「企業が巨大になれば司法省が関与してくることは避けられない。いずれ出る杭は打たれるだろう」と、アマゾンが調査対象になる可能性を指摘する。

ニューヨーク大学のGalloway教授も同意見だ。「アマゾンは今の状態を維持することはできないだろう」と語っている。

実際に、独禁法関連の調査を受けることになるのかどうか、私には分からない。しかしもしそうなったら、アマゾンはどのような企業になっていくのだろうか。インターネット産業は、どのような影響を受けるのだろうか。

・初心者OKビジネスマンのためのAI講座 なんど同じ質問をしても怒らないAIエンジニアが講師

・2歩先の未来を創るTheWave湯川塾

湯川鶴章オンラインサロン 湯川の日々の取材メモを全公開!



【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

コロンビア大を告発、デモ参加者逮捕巡り親パレスチナ

ビジネス

タイ自動車生産、3月は前年比-23% ピックアップ

ビジネス

米500社、第1四半期増益率見通し上向く 好決算相

ビジネス

トヨタ、タイでEV試験運用 ピックアップトラック乗
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story