コラム

モバイル動画の最終形とVRの未来

2016年09月02日(金)16時00分

 視聴者がスマホ片手に街に飛び出し、情報を他の視聴者と共有しながら西野さんを探し回る。これこそモバイルというデバイスの特性を理解した動画番組だと思う。

 一方で西野さんというタレントに出演してもらわなければならないし、カメラクルーも必要。個人のYouTuberには製作できないタイプの動画コンテンツになっている。

 動画コンテンツも「デバイスの特性を理解した個人の成功」から「それを洗練させた企業の勝利」の段階にようやく入ったわけだ。

次のパラダイム「VR」の特性とは

 さてgumiの國光さんの最近の関心事はVR(バーチャルリアリティ=仮想現実)、AR(オーグメンテッドリアリティ=拡張現実)、MR(ミックスリアリティ)。世界中の関連情報を収集しているし、関連企業への投資にも積極的だ。

 國光さんによると、VR、AR、MRの世界も、「コンテンツをそのまま投入し失敗」→「デバイスの特性を理解した個人の成功」→「それを洗練させた企業の勝利」という図式で進む可能性があると言う。

 そうであるならば、これから数多くのVRコンテンツが登場しても、既存コンテンツを単に360度化しただけのコンテンツだと、成功は限定的。その後、個人クリエーターが試行錯誤を続け、ある者は、VRならではのコンテンツがどういうものであるかを探り当て、大成功を収めるだろう。そしてそれを真似て、プロの集団が動き出し、市場を一気に押さえ出すだろう。

【参考記事】バーチャル・ポルノがリアルな市場に:2025年の推計値は10億ドル

 問題はVRならではのキラーアプリとはどのようなものになるのか、ということだ。まずはVRゲームの市場が立ち上がることは間違いないだろうが、それ以降、どのようなソーシャルやビジネスのアプリが登場するのだろうか。PC時代の検索、モバイル時代のメッセンジャーときて、VR時代には何がキラーアプリ、キラープロダクトになるのだろうか。

 モバイルとは比較にならないほど大きくなると言われるVR、AR、MRの市場。次のGoogle、次のLINE、次のAppleになろうと、プレーヤーたちが水面下で動き始めたところだ。

2歩先の未来を創る少人数制勉強会TheWave湯川塾主宰
有料オンラインサロン

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国株急落、米中貿易摩擦巡る懸念再燃で利食い売り

ワールド

米、ウクライナのロ領内エネ標的攻撃を支援 数カ月前

ワールド

金現物が最高値更新、米中貿易摩擦巡る懸念で安全資産

ワールド

中国、米の協議要請「保留」 レアアース規制巡り=U
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリカを「一人負け」の道に導く...中国は大笑い
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 9
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 6
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 7
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 8
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 9
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 10
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story