コラム

すべてのパソコンをタブレットに変えたら、どれぐらい残業は減るのか

2019年03月22日(金)14時50分

パソコンに向かっていても何を考えてるかわかりゃしない kohei_hara/iStock.

<パソコンはもしかして、「快適過ぎて生産性の足を引っ張る」オフィスの敵なんじゃないか? 実際に試してみたら劇的な効果が出た>

「これは、いったい、何をしているのか......?」──14年前にコンサルタントとなり、クライアント企業の現場を回り始めたころのことです。私は、毎日のように強い違和感を覚えていました。とくにオフィスへ一歩足を踏み入れると、違和感はマックスレベルに......。

訪問した企業のオフィスで必ず目にしたのが、パソコンの前に座って仕事をしている人の姿です。しかも1人や2人ではありません。オフィス内にいるほとんどすべての人がパソコンの前に座り、画面を凝視し、キーボードをせわしなく叩いているのです。

パソコンを使う仕事がそんなにあるのか?

私は現場に入って、目標を絶対達成させるコンサルタントです。目標を達成させるためには、以下の2つの事柄を突き詰める必要があると考えています。

・目標達成に直接関係のある活動量を増やす
・目標達成に直接関係のない活動量を減らす

働き方改革時代となり、仕事と生活の調和「ワークライフバランス」が求められる今、上記の事柄がより高次元なレベルで求められるようになります。何しろ4月からは、残業の上限規制に新ルールが適用されるわけですから、ますます「目標達成に直接関係のない活動」の量を減らしていかなければなりません。

しかし多くの方が、そのことに無頓着です。

「目標達成に直接関係のない活動」について考えたとき、私がとくに気になっているのが、「パソコンでの作業」です。オフィスワーカーのほとんどが一日中パソコンの前に座って仕事をする光景は、私がコンサルタントになった14年前から変わっていません。

オフィスワーカーにパソコンが必要なのはわかりますが、そんなに1日中、パソコンですべき仕事はないはずです。パソコンで「何か」をしていると、仕事をした「気分」になるだけなのではないでしょうか。

パソコンなどないほうが、もっと労働時間が短くなるのではないか。もっと人が少なくて済むのではないか。もっと組織内コミュニケーションが活性化するのではないか。コンサルタントになってから、そう思い続けています。

問題はパソコンのあの装置?

ちなみに私は、日中はほとんど毎日、どこかの企業でコンサルティングをするか、講演や研修の講師をしています。ホワイトボードを使って話し、全員に手書きのメモをとってもらいながら議論するというスタイルをとっています。

ですからパソコンは使用しません。コンサルティングセッションが終わってから、30分程度で日々送られてくるメールを処理し、移動時間などでコラムやメルマガの執筆をするときに使うぐらいです。

それでもたまに1日オフィスにいて、ずーっとパソコンの前に座っていますこともあります。そういうときは、後で振り返ってみると何をしたのか思い出せなかったりします。思い出せない程度のことしかしていなかったということでしょう。

「ずっと問題意識を持ってます」と書いている私でさえこうなのです。パソコンの前に座っていると誰もがそうなるのです。

ということは、人の意識ではなく、パソコンの存在そのものに問題があると捉えるのが正しいでしょう。もっと分解すると、パソコンに能動的に関わるためのキーボードという入力装置こそが諸悪の根源なのかもしれない、ということです。

タブレットに変えただけでこの効果

そこで提案です。

オフィス内のパソコンをすべてiPadのようなタブレットにしてみてはどうでしょうか。できる限り周辺機器をつけずに、オフィスワーカー全員に渡します(情報システム部門や、経理、総務などは除く。オフィスワーカー全員がムリなら、せめて経営幹部や中間管理職、営業を対象にします)。

キーボードは諸悪の根源ですから絶対になしです。タブレットを置くスタンドもなし。全員、タブレットを手に持って仕事をするのです。すると意外な感想が出てきました。

・タブレットを持ち続けるのがキツイ
・タブレットを持ちながら長時間座っていることにも違和感を覚える
・パソコンで「何か」をしているときより、はるかに手を動かす量が少ないので仕事をしている「気分」を味わえない
・タブレットでは仕事にならないので、パソコンに戻してほしいという「気分」になる

組織の『目標達成に直接関係のある活動』をしているのであれば、少しぐらい慣れなくてもタブレットで仕事をするのにそれほど支障はないでしょう。少なくとも、組織の『目標達成に直接関係のない活動』は必要最小限になっていきます。

タブレットだけで、どれほど残業できるか?

たとえば夕方の6時から夜10時ぐらいまで、ずっと自席でタブレットを持ちながら「何か」をし続けられるか、実際にやってみましょう。かなりキツイと思います。カタカタとキーボードを叩けないので、仕事をしている「気分」を味わうこともできません。

あったらあったでいいが、なかったらなかったで問題ない──フリマで購入する服と同じような──作業が激減していきます。

ある企業で、経営幹部、管理者、営業全員にタブレットを配布してみました。結果どうなったかと言いますと、一人当たりの平均残業時間が「15時間/月」削減されたのです。何も施策はしていません。ただパソコンをタブレットに変えただけです。たったそれだけでこれだけの効果が出ました。

夜になると、お客様など電話する相手もいなくなるため、パソコンなしでデスクワークを続けるのが辛くなるのもあるのでしょう。

メールの数や、資料作成時間は8割減。その代わり、社内コミュニケーションは大幅にアップしました。長いメールを書けないため、電話したり、直接面と向かって話す量が増えたからです。

残業も減り、体感的ではありますが社内コミュニケーションも活性化しました。いいことばかりです。

キーボードのような快適な文字入力装置があるから、ムダな資料が増えたり、意味のないメール、やたらと文章の長いメールが飛び交うのです。多少、非効率的になったとしてもキーボードレスのタブレットで十分。パソコンで仕事をしている「気分」を味わえる時間を減らすだけで、オフィス内の残業は激減するはずです。それほど、パソコンはムダな仕事を創出する装置なのだと認識しましょう。

極端な発想ですが、一考の余地はあります。

※3月26日号(3月19日発売)は「5Gの世界」特集。情報量1000倍、速度は100倍――。新移動通信システム5Gがもたらす「第4次産業革命」の衝撃。経済・暮らし・医療・交通はこう変わる! ネット利用が快適になるどころではない5Gの潜在力と、それにより激変する世界の未来像を、山田敏弘氏(国際ジャーナリスト、MIT元安全保障フェロー)が描き出す。他に、米中5G戦争の行く末、ファーウェイ追放で得をする企業、産業界の課題・現状など。

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の高層複合住宅で大規模火災、13人死亡 逃げ遅

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story