コラム

日本領事「拘束」、ロシアの「特大ブーメラン」...露スパイが日本でやってきたこと

2022年10月01日(土)17時07分

2014年にはロシア通称代表部の職員(正体はGRU〈軍参謀本部情報総局〉所属のスパイだった)が、航空自衛隊OBから防衛関連資料を受け取っていた。2012年にはロシア大使館付武官(正体はGRU所属のスパイ)が陸上自衛隊三佐から防衛庁の戦術概説の機密書類などを受け取っていたとして逮捕されている。

こうしたロシアのスパイのケースは枚挙にいとまがない。通商代表部にいる外交官という肩書きを装い、守られながらスパイ活動を繰り広げている。もちろん日本でこうしたスパイが捕まることは、ウィーン条約に規定された外交官の免責特権があるために、皆無だ。

ある公安関係者が言うには、日本に来ているロシアのスパイは、「ビジネス分野や学術分野などでできる限り多くの関係者らと知り合っていることが評価につながる。時に、質よりも量(人数)がスパイ活動の重要な要素になっています」と言う。つまり、できる限り数多くの日本人と接触して情報をもらっているということだ。今回捕まった日本人領事とやっていることはそう変わらない。

ウラジオストクの「スパイ」事件と、外交官などにからむ事情について、さらに「スパイチャンネル~山田敏弘」でも解説しているので、ぜひそちらをご覧いただきたい。

プロフィール

山田敏弘

国際情勢アナリスト、国際ジャーナリスト、日本大学客員研究員。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版、MIT(マサチューセッツ工科大学)フルブライトフェローを経てフリーに。クーリエ・ジャポンITメディア・ビジネスオンライン、ニューズウィーク日本版、Forbes JAPANなどのサイトでコラム連載中。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』、『CIAスパイ養成官』、『サイバー戦争の今』、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』、『死体格差 異状死17万人の衝撃』。最新刊は『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』。
twitter.com/yamadajour
YouTube「スパイチャンネル」
筆者の過去記事一覧はこちら

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