コラム

「福島沖に怪魚が出現!」のデマも...韓国「反日感情」の裏で北朝鮮スパイが暗躍していた

2023年04月08日(土)19時10分
福島第一原発の処理水放出への抗議デモ

福島第一原発の処理水放出への抗議デモで髪を剃る韓国の大学生(ソウル、2021年4月) Kim Hong-ji-Reuters

<福島第1原発の処理水の海洋放出に反発し、韓国人の不安感と日本への反感を煽るなど、具体的な指示を北朝鮮側から受けていたスパイたち>

2023年4月7日、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出の撤回を要求している韓国の議員らが福島県を訪問した。議員らは、韓国の最大野党「共に民主党」の国会議員で、「安全性が確保されない限り、放出すべきでない」と主張している。

■【解説】福島の風評被害を作っていたのは北朝鮮のスパイだった! 韓国の「反日」を煽る北朝鮮スパイたちの行状

その安全性については、国際原子力機関(IAEA)が5日に処理水の安全性に関する報告書を公表し、処理水の海洋放出に伴う人への影響を「非常に低い」とし、「追加で検証する必要はない」とまとめている。

今回訪日した韓国の議員団については、日本の国会議員などと会うこともできずに、韓国の政界でも無謀な訪問だったと批判されているという。

そんな処理水をめぐる韓国での騒動では、不穏なニュースも報じられている。朝鮮日報の3月23日付の記事によると、「北朝鮮工作員とひそかに連絡を取り北朝鮮の指令を受けて活動した、いわゆる『昌原スパイ団』、自主統一民衆前衛(自統)のメンバーが、北朝鮮から『反日感情』をあおって闘争せよという指令を受けていたことが23日に判明した」という。

しかもその北朝鮮による指令はさらに具体的で、日本が処理水の放出を決定したことを受け、福島沖で「怪魚の出現」などのデマをインターネットで大量にばらまいて、韓国人の不安感と反感を煽るべく世論を操作するよう指示していた。さらに韓国内で「反米デモ」や「ゼネスト闘争」などにうまくからめて、福島批判や反日感情を高めることを目指せとしていた。

この指令を受けていた自統のメンバーらは韓国南部の慶尚南道・昌原を中心に活動しており、2022年11月に国家安保法違反で逮捕されていた。その供述などから、北朝鮮からの反日活動についての具体的な指示が明らかになった。

処理水放出への反対デモを実施した国会議員

さらにこの指示と直接関係しているかどうかはわからないが、日本の処理水放出に反対するデモを実施していた韓国国会議員もいる。例えば、韓国で従軍慰安婦被害者を支援するための正義記憶連帯(正義連)の理事から国会議員になった尹美香(ユン・ミヒャン)議員も、処理水放出に反対するデモを実施している。

その尹美香議員は、2023年2月10日に慰安婦支援団体への寄付金を横領したとして、韓国の裁判所が罰金1500万ウォンの有罪判決を下している。この事件を受けて、尹美香議員は、所属していた「共に民主党」から除名されている。

いろいろと韓国の反日活動は裏で複雑に絡み合っている感があるが、詳しくは、「スパイチャンネル~山田敏弘」の「福島の風評被害を作っていたのは北朝鮮のスパイだった!」でも説明しているのでぜひご覧いただきたい。

プロフィール

山田敏弘

国際情勢アナリスト、国際ジャーナリスト、日本大学客員研究員。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版、MIT(マサチューセッツ工科大学)フルブライトフェローを経てフリーに。クーリエ・ジャポンITメディア・ビジネスオンライン、ニューズウィーク日本版、Forbes JAPANなどのサイトでコラム連載中。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』、『CIAスパイ養成官』、『サイバー戦争の今』、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』、『死体格差 異状死17万人の衝撃』。最新刊は『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』。
twitter.com/yamadajour
YouTube「スパイチャンネル」
筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story