アングル:イラン戦争によるガソリン価格高騰、EV販売に追い風か
英ロンドン南西部で中古電気自動車(EV)の販売店を営むマーティン・ミラーさんとエステルさん。英ギルフォードで3月13日撮影。 REUTERS/Nick Carey
Nick Carey Valerie Volcovici
[ギルフォード(英イングランド)/リッチモンド「(米バージニア州) 18日 ロイター] - イラン戦争でガソリン価格が高騰し、自動車のメーカーやディーラー、そして給油のためにガソリンスタンドを訪れる車のオーナーの間では不安と先行き不透明感が広がっている。しかし英ロンドン南西部で中古電気自動車(EV)の販売店を営むマーティン・ミラーさんにとって、ガソリンの値上がりはビジネスチャンスだ。
ミラーさんは、2月28日にイスラエルと米国によるイラン攻撃で今回の戦争が始まってから1週間後に、これまでで最も多忙な土曜日を迎えた。今は在庫の積み増しを急いでいる。「車は本当に、ものすごい勢いで売れている」状況で、店を訪れる顧客の間ではガソリン価格がさらに上昇するのではないかとの懸念が強まっているという。従業員はオークションでEVを「狂ったように」買い付けているが、これは「この流れが今後も続くと確信しているからだ」と明かした。
英政府のデータによると、3月16日時点で国内では1リットル当たりのガソリン価格が戦争開始以降7%上昇。欧州連合(EU)欧州委員会のデータでは、EU域内の価格は8%上昇した。また、米エネルギー省エネルギー情報局は17日、国内のガソリン平均価格が2月下旬以降27%上昇し、1ガロン当たり3.72ドルになったと発表した。
<消費者行動の変化>
歴史的に見ると、原油価格の急騰は消費者の自動車購入行動に構造的な変化をもたらしてきた。1970年代のエネルギー危機の際に米国の消費者はより小型の車を選ぶようになり、日本の自動車メーカーが優位に立ち、米国メーカーのシェアを侵食した。
アナリストの見立てでは、今回の急激な燃料価格上昇ですぐに消費者の新車購買行動が大きく変わる可能性は低い。消費者がより燃費の良い車へとシフトするには、ガソリン価格が上昇を一定期間続けるか、心理的な節目を超える必要があるという。
オンライン自動車販売カーグルズの経済・市場分析ディレクター、ケビン・ロバーツ氏は「消費者はガソリン価格に非常に敏感だが、(消費行動が変わるには)ある程度の節目に達する必要がある。1ガロン当たり4ドルが注目すべきラインかもしれない」と述べた。これは22年にロシアによるウクライナ侵攻後の原油価格に起きたショックでEVへの関心が高まった時点の水準だ。
一方、米国に住むザック・ハビエルさんは、様子見を選ばなかった。妻とともに南部バージニア州リッチモンドの中古EV販売店を訪れ、ガソリンエンジンのSUV(スポーツタイプ多目的車)をEVに買い替え、さらに小型EVをもう1台購入。「みんなが慌てる前に動こうと思った」からだ。
現時点では、米国の新車購入者の動きに大きな変化は見られない。カーグルズによると、まだEV検索の動きに顕著な変化は見られず、別の自動車販売サイトのエドモンズも、戦争開始後最初の1週間にEVやハイブリッド車など電動車の購入を検討した消費者の割合は22.4%と、前週の20.7%から小幅な上昇にとどまったと報告している。
<欧州ではEVシフトの可能性>
一方、欧州ではEVへの関心が高まる公算が大きい。欧州は昨年、販売に占める完全EVの比率が19.5%に達しているほか、各国でEV購入への税優遇措置も再導入されているためだ。
ドイツのオンラインディーラーのマインアウトは、EV関連の閲覧数が戦争開始以降40%増加した。同社は「多くの人が車の維持費により強い関心を向けている」としている。
オンライン市場カーワウが12日にドイツで実施した調査によると、回答者1164人のうち48%が、燃料価格の高騰はEVやハイブリッド車の検討に影響すると答えた。また、2日―12日にEVの購入を検討する消費者の割合は最大66%に達し、2月末の55%から上昇した。
ベトナムのEVメーカーのビンファストはこの状況を商機と捉え、ガソリン車からの乗り換え顧客に対しEVで3%、電動スクーターで5%の値引きを提供している。ベトナムでは9日時点でガソリン価格が戦争開始以降50%上昇した。
一方、米国市場では、燃料価格がさらに大幅に上昇しない限り、EVへの大規模な移行は起きにくいと専門家はみている。昨年の新車販売に占めるEVの割合は7.7%にとどまり、トランプ政権が7500ドルの税額控除を打ち切った後、EVは販売が鈍化している。
米自動車業界調査会社コックス・オートモーティブによると、米消費者の多くはガソリン価格が1ガロン6ドルに達すればEVやハイブリッド車への乗り換えを検討するという。同社幹部のステファニー・バルデスストリーティー氏は、燃料価格の上昇は関税やインフレ懸念と相まって消費者の間で不確実性を高め、自動車販売全体に悪影響を与える可能性があると指摘。「(消費者は)今すぐ車が必要でなければ、購入を先送りするかもしれない」と述べた。
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