
イタリア事情斜め読み
イタリア刑務所、トランスジェンダー受刑者を守る専用区画の誕生
| ローマの先駆け レビッビア刑務所にトランス専用区画がようやく開設された
イタリアは欧州でLGBTQ+権利がかなり進んだ国の一つである。しかし刑務所内の現実はずっと厳しかった。ローマのレビッビア刑務所は2025年にイタリア初のトランスジェンダー専用区画をようやく開設した。収容規模は10人程度で、トランス女性やノンバイナリー、クィアの受刑者を主に対象とする。
この区画は標準的な男性区画や女性区画とは完全に分離され、専用の生活空間をしっかり提供する。イタリア司法省が主導し、刑務所管理局が迅速に実施した措置だ。目的は明確で、トランス受刑者が従来の区画で頻繁に遭受する差別や性的暴力から確実に保護するものである。
イタリアの刑務所ではトランスジェンダー受刑者が約100人と推定され、多くの場合生まれた性別に基づいて無理やり収容されるため、深刻な人権侵害が繰り返し発生していた。専用区画の導入はこうした被害を根本的に根絶する画期的なステップだ。
| 背景にある長年の闘いと人権問題が深刻に浮き彫りになった
LGBTQ+団体は長年この問題を強く訴えてきた。イタリア刑務所ではゲイやトランス受刑者がいじめや暴行の標的になりやすい。男性刑務所に収容されたトランス女性は特に脆弱で、性的虐待や自殺未遂が残念ながら報告されてきた。欧州人権裁判所も過去にイタリアを厳しく批判し、適切な保護を強く求めていた。
2020年代に入り、欧州全体で刑務所内のジェンダー多様性対応が急速に進む中、イタリアもようやく動き出した。ローマのレビッビア刑務所は女性刑務所の一部を大幅に改修し、専用区画を実現した。スタッフ教育も徹底的に強化され、心理カウンセリングやホルモン治療の継続を確実に保証する体制を整えた。
この取り組みは人権団体から非常に高く評価されている。アムネスティ・インターナショナルや国内のLGBTQ+組織は「遅きに失したが大きな進歩だ」と素直に歓迎した。一方で予算不足や保守層の抵抗もかなりあったが、政府は人権向上の象徴として断固推進した。
| 欧州全体の潮流とイタリアの位置づけが明確に示された
欧州では刑務所内のトランスジェンダー対応が着実に加速している。イギリスやスペインはすでに専用区画や個別対応を積極的に導入し、自己申告の性別に基づく収容を柔軟に認めている。イタリアのこの措置は後発だが、規模と専門性で間違いなく注目を集める。トランス受刑者の精神的健康を守り、再犯防止にも確実につながると期待される。
イタリア全体の刑務所でLGBTQ+受刑者は少数だが、無視できない存在だ。専用区画の成功は他の都市への拡大を自然に促すだろう。司法省はモニタリングを慎重に続け、必要に応じて全国展開を本格的に検討する方針だ。
| 残る課題と未来への示唆が強く残る
もちろん課題はまだ残る。専用区画が少人数のため、待機者が残念ながら発生する可能性がある。またノンバイナリーやクィアの定義が曖昧で、適用基準の統一が急務だ。保守派からは「特別扱い」との批判も相変わらず出るが、人権の観点からそれは明らかに誤りだ。
刑務所は罰の場だが、人間性を奪う場ではない。イタリアのこの革新は、刑罰制度が多様性をしっかり尊重する方向を示す。世界的に見ても、トランス権利の進展は社会の成熟度を正確に測る指標だ。日本を含むアジア諸国でも、刑務所内のLGBTQ+問題は徐々に議論されつつある。
イタリアの事例は、差別を減らす具体的な解決策を明確に提供する。被収容者の尊厳を守ることは、社会全体の公正を確実に高めることだ。この専用区画の運用が成功すれば、イタリアは欧州の人権リーダーとしてさらに高く評価されるだろう。2025年のこの一歩は、刑務所改革の新時代を確かに告げるものである。






- ヴィズマーラ恵子
イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie






















































