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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

約25万台リコールのシトロエンの大スキャンダル 原因は日本社製のエアバッグ

フランスでは3歩歩けばシトロエンにあたる・・ほどの国民的な車シトロエン  筆者撮影

フランス製の車といえば、プジョー、ルノー、シトロエンを思い浮かべる方が多いと思いますが、その中のシトロエンが今、欠陥車問題で大スキャンダルに見舞われています。

この騒動が公になったのは、5月の初旬以来のことで、シトロエンはもとより、その親会社であるステランティスはその対応に大わらわになっています。また、この原因となった欠陥エアバッグが日本社製(タカタ)のものであったことから、日本人の私としても心穏やかではない気持ちでその成り行きを見守っています。

安全のために搭載されているはずのエアバッグの欠陥

問題となっているエアバッグは、すでに2017年に倒産している日本の機器メーカー「タカタ」のエアバッグで、2001年にトゥールーズにあるAZF工場(窒素肥料生産工場)の大爆発事故の原因となったガスと同じ硝酸アンモニウムが搭載されており、このエアバッグは、ステアリングホイールや助手席のグローブボックスに設置されており、通常エアバッグは衝突時に人命を救うことを目的としていますが、これが作動すると逆に重症を負う可能性があるという、まさに何のためのエアバッグ?という危険な状態に陥る危険性を秘めています。

車の衝突による衝撃により、このエアバッグからは、金属とプラスチックの飛沫がものすごい速度で放たれるという事故がすでに2014年にアメリカとアジアで複数の死亡事故も発生していたために、警告が発せられていました。今回のフランスでのシトロエンのリコールに関しては、シトロエンC3とDS3が該当すると発表されていますが、フランス国内では約25万台がこれに該当し、アメリカ、南ヨーロッパ、アフリカ、中東などの約20ヵ国で合計68万台以上が対象とされていると言われています。このエアバッグの欠陥は特に高温多湿により劣化が早いという報告もあり、これまで事故が発生した地域が限られていたこともありますが、それにしても、実際に最初の警告からなぜ? 10年間もの長期間放置され続けてきたのかについて、疑問と怒りの渦が巻き起こっています。

リコール対応に追われるシトロエンと販売代理店

この大規模リコールにより、シトロエンは、2009年から2019年にかけて製造されたシトロエンC3とDS3の数千人の所有者に対して「場合によっては、重症を負ったり、死に至る事故に繋がる危険性があるため、ただちに運転を中止してください」という書留書簡を配布したと説明していますが、これまでの経緯を全く知らなかったユーザーにとっては、突然の「運転をやめてください」という通知は、逆に顧客の不安を増大させることとなり、まさに雷鳴のような効果をもたらし、一気にこの問題を世間に知らしめる結果となりました。

シトロエン及びステランティスは、このリコール対象車両に対して代替車を用意すると発表していますが、この対応が即時に速やかに完了するわけもなく、この対応には大渋滞が起こっています。フランスの日常から考えても、このような対応がスムーズに行われるはずもなく、個々の代理店は、様々な手を尽くしながらも、さらなる対応については、シトロエンが沈黙してしまっていたことがさらに騒ぎを大きくしてしまった感があります。

ほんの数日前に、シトロエンのトップがようやく沈黙を破り、仏紙フィガロのインタビューに応じ、説明を行いました。このインタビューによれば、「フランスでリコール対象になっている25万台の車両のうち、14万人の顧客がシトロエンのリコール対応プラットフォームに登録しており、すでに1万5千台の車両が修復されている」とのこと。しかし、これは、全リコール車両のわずか6%にしかすぎません。

また、「この問題のエアバッグは、運転中に危険はないが、衝撃があった場合にのみ問題が起こる」とし、「エアバッグ交換作業中は代替車が利用できる」としています。さらには、「リコール25万台という数字はフランスにおけるシトロエンブランド車の1年半の販売台数に相当します。それは膨大な数で、販売センターを増設し、電話をかけまくり、数千個のエアバッグを緊急に用意する必要がありました。」と同情を募るような内容まで飛び出しています。

しかし、ユーザーにとっては、「それがなに?」という話で、まさにいつ起こるかわからない衝撃事故は考えずに修理の間だけ代替車を利用すればいいとも受け取れかねない炎上の火消し作業とも受け取られかねない発言が疑問視されています。

実際に車がなければ生活できない人々にとっては、危険だから車に乗るなということは死活問題で、代替車がすぐに用意されない場合は、リスクを冒して危険な車を利用するしかないのです。

フランスにおける自動車産業と信用問題

実際に昨年、フランスで起こった死亡事故車両がこのリコール対象車であったことから、告訴問題にまで発展している今回のシトロエンの大規模リコールの大スキャンダル。10年前に海外で起こった事故が最初であったとはいえ、これだけリコールまでに時間を有してしまったことがさらに問題を大きくし、信用問題に関わってきています。

フランスの自動車産業は、急速に成長し、20世紀で最も重要なフランスの産業のひとつとなっています。自動車産業は、フランス経済の主要産業であり、その中でもトップ3に入るシトロエンの大スキャンダルは、フランス経済にも大きな影響を及ぼしかねない大問題です。

消費者が大きなメーカー、一大ブランドの商品を選択するのには、そのブランドを信頼してのことであるのは言うまでもありません。その信頼が深く傷つけられたこの大規模リコール問題とその対応には、今後のシトロエンの売り上げにも大きく影響するのは必須です。実際に6月中旬に新型電動シトロエンC3を発売する予定になっていたシトロエンにとっては実に痛いタイミングであったことは言うまでもありません。

また、この問題のルーツとなったエアバッグについても、すでに発売元の「タカタ」が倒産しているとはいえ、日本製品の欠陥という意味では、小さくない問題のような気もしていて、フランスにおいて、「made in japan」、日本製品に対する信頼は驚くほど大きいもので、「同じ製品でも日本のものならば大丈夫・・」というイメージはかなり定着しているものであるのですが、その日本の製品が原因で大スキャンダルが発生したとなると、この「made in japan」の信頼に傷がつくことにもつながりかねないわけで、私は日本人として、そんなことも懸念しているのです。

 

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著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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