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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

フランスマスク義務化全面撤廃に見るフランスと日本を足して2で割るとちょうどいいところ 

あっという間にマスクが消えていくパリのメトロの駅構内      筆者撮影

フランスは5月16日から、これまでかろうじて残されていた公共交通機関でのマスク着用義務化が撤廃されました。これまでも、すでに、あんなにすったもんだして適用したワクチンパスも3月半ばの時点で、あっさり廃止になり、それと同時期に屋外はもとより、屋内でのマスクの義務化も撤廃され、街中でマスクをしている人はほとんどいなくなっていました。

そんな中、公共交通機関内でのマスク着用義務だけは継続され続け、また、罰金135ユーロを伴うからか、バス、メトロなどの中では、ほぼほぼ全ての人がマスク着用義務を守ってマスクをし続けていました。まさに罰金の威力恐るべしでした。

昨年の12月から今年の1月にかけては、1日の感染者数が40万人超えという爆発的な感染状況であったフランスもここ1ヶ月程度は、感染者数もかなり減少傾向にあり、ここのところ1日の感染者数は3万人台にまで下がり、病院のICUの占拠率も低下してきたことから、もはやマスク着用義務を継続することは適切ではないとし、これまで維持しつづけてきた公共交通機関でのマスク義務化撤廃を発表したのでした。これにより、バス、メトロ、タクシー、電車、飛行機などの全ての公共交通機関でマスクは必要なくなりましたが、一応、政府の発表では、「パンデミックは終わったわけではないので、今後も高齢者や持病のある人々に対してはマスク着用が推奨されます」という文言がつけられています。

実際にマスク義務化が撤廃されてみると・・

公共交通機関のマスク義務化が撤廃された初日、さて、果たして、どの程度の人がマスクをしなくなったのか?と見てみると、バスの中では、運転手さんはマスクをしていましたが、マスクをしている人は20人に一人くらい・・メトロになると、もう少し増えて5人に1人くらいが、まだマスクをしている感じでしたが、初日にしてすでにもう、かなりの人がマスクを外してしまっています。しかし、バスよりも換気が悪いと思われるメトロの中では、かろうじてマスク率が高いことは、ちょっと意外で、「やっぱり用心深い人もいるんだ・・」「少しは考えているんだな・・」と妙に感心させられた気もしたのでした。

もっとも街中となると、これはもうマスクをしている人を探す方が大変な感じでマスクをしているのは、100人に1人いればいいくらい、もうマスクはほぼ街中からは消えてしまいました。

もともとマスク嫌いのフランス人、義務化が撤廃されれば、かなりの割合でマスクをしなくなるのは目に見えていましたが、それにしても早過ぎないでしょうか? ウィルスが消滅したわけでもないのに、ほどほどにして、せめて公共交通機関くらいはマスク義務化は維持してくれてもいいのに・・と思うのです。

欧州疾病管理センター(ECDC)が、オミクロンBA4、BA5の波への警告

一方、公共交通機関でのマスク義務化が解除される中、欧州疾病管理センター(ECDC)は、オミクロンBA4,BA5がすでにゲノム解析の結果、フランスにも上陸していることを発表しており、またこのオミクロンBA4,BA5について、「この変異種は感染による免疫防御を回避することができるために、再感染が可能で、今後、数週間から数ヶ月の間に欧州でコロナウィルス感染の症例が大幅に増加する可能性がある」と警告しています。すでに南アフリカでは、このオミクロンBA4,BA5が感染者の大半を占めており、新しい波を形成しているといいます。欧州疾病管理センターでは、決して油断できる段階ではなく、欧州各国が検査を継続することと、高齢者や持病を持っている人に対しては、2回目のブースター接種(4回目のワクチン接種)を推奨しています。

しかし、折りしもパリはここ1週間ほどは、もう夏かと思われる晴天と気温の上昇でマスクが苦しくなっていることも事実です。ましてや、2月以来、コロナウィルス感染が減少していることもありますが、報道のほとんどは戦争一色、一部、大統領選挙や新内閣組閣などのニュースもありますが、コロナウィルスに関する報道は、上海での非人道的なロックダウンの様子ぐらいで、フランス国内での感染状況の入り込む余地はなく、コロナウィルスに関する危機感は消え去りつつあります。

パンデミックの影響で物価の高騰が始まって、ウクライナ戦争がそれに拍車をかけてインフレが進み、国民への経済的な締め付けがき厳しくなっていく中、少しでも国民を締め付けるものから解放したい、経済を回して景気を回復したい、これだけ長期間にわたるパンデミックとは、できるだけ日常生活を維持しながら付き合うという政府の意向がひしひしと感じられる今回の公共交通機関でのマスク義務化撤廃です。

同調圧力は日本にもフランスにもある

先月、日本に一時帰国していた私は、話には聞いていたものの、日本の人々の徹底したマスク率に驚かされました。レストランなどでも食べ物を口に運ぶたびにマスクをずらして食事している人もいて、レストラン側も人数制限、時間制限などを設けているお店もあって、びっくりしました。これをフランス人が見たら、私以上に仰天するに違いありません。また、近所の通りを歩いていて、全く人がいないので、「ここはさすがにいいでしょ・・」と思って、マスクを外したら、横道のどこからか人が歩いてきて、思いっきり怖い顔で睨まれたのには、ゲンナリしました。これが同調圧力というもの、一般市民のマスク警察なのか・・と日本のマスク事情を肌で感じた思いでした。

そもそも日本はマスク着用は義務化されているわけでもないのに、このマスク率。この同調圧力の威力の凄まじさ。しかし、フランスにも同調圧力がないわけではありません。けれどそれは、日本とは真逆で、マスクをしている人に対して、「いつまでもマスクなんかしてるなよ!」という反対のもの。しかも、睨まれるだけでなく、はっきり、言われることもあります。マスク着用が義務付けられた当初には、これに反発して、マスク着用を注意したバスの運転手を殴り殺されるという暴力事件も起こりました。

最近、これを見かけたのは、公共交通機関でのマスク義務化が解除される前のこと、スーパーマーケットのレジに並んでいた時に、年配の男性が中年の女性に向けて、「なんだ、おまえ、なんで、いつまでもマスクなんかしてるんだ!目障りだ!」といちゃもんをつけていたのです。その女性は、慣れているのか、本当なのかはわかりませんが、「花粉症がひどくて・・」と言って、あっさり交わすと、花粉症ならば、マスクをしてもいいと思っているのか? その男性はあっさり引き下がったのでした。

同調圧力にも色々あって、日本の場合は、ちょっと度が過ぎる感はありますが、実際にそのために国が強制的に義務化にしなくても、罰金がなくても、これまで奇跡的とも言えるくらい感染を抑えてきた実績があるので、一概に悪いとも言えませんが、それにしても、マスクの義務化が撤廃されたとはいっても、マスクをし続けたい人はマスクをする権利はあるはずなのに、どういうわけか、これが気に入らない人がいることが、今後、フランスでは、ちょっとした恐怖でもあります。ウィルスを撒き散らしてほしくないから、自分にも感染の危険が及ぶからマスクをしろ!というならば、まだともかく、慎重に我慢してマスクをしている人に対して、「マスクを外せ!」というのは、日本の同調圧力以上に納得がいかないもので、これは、実は自分がマスクを外していることに対して、少しでも後ろめたい思いがあるからこそなのでは?とも思います。

いずれにしろ、同じ事柄に対する同調圧力が全く逆に働いているのは、興味深いといえば興味深いことです。

また、特に気になるのは、飛行機内でのマスク着用義務撤廃ですが、国際便の場合は特に、日本の航空会社はマスク義務化を撤廃することはないでしょうし、同じ日本に行く場合でもエールフランスなどのヨーロッパの航空会社と日本の航空会社では対応が異なることになり、ましてや現在は、ウクライナ戦争のための長距離フライト、日本も鎖国を解除して外国人も受け入れるとなると、なかなか面倒なことが起こりそうな気もしています。

日本とフランス 足して2で割るとちょうどいい

一気に、コロナウィルスのための規制が解除になり、解放的な生活に戻っていくフランスの様子も不安になりますが、いつまでも、あまりに厳しい日本もどんなもんだろうか?そこまで、まだ気をつけなくてはいけないの?と、両方の国を見ていると思います。日本人とて、これから蒸し暑くなる季節にガチガチに、それほど人のいない屋外でまでマスクをし続けなければいけないことに、日本人とてストレスを感じないはずはありません。とはいえ、義務化して罰金まで制定しなければ従わないフランス人に比べたら、格段に我慢強くて、規則をしっかり守る日本人ですから、少し緩めてもいいのでは?と思ってしまいます。もっとも、日本はもともと、マスク着用は義務付けられているわけでもないので、世間の論調次第というところもあるのでしょうが、どちらにしても、フランスと日本の中間くらいがちょうどいいのではないか?と思います。

フランスと日本の違いについては、以前から足して2で割るくらいがちょうどいい・・と思うことはたくさんあって、例えば、日本のお店など、特にコンビニなどは、365日、24時間営業(または深夜営業)なのに比べて、フランスでは日曜は休みというお店がほとんどです。フランスに来てから、この日曜にはお店が休みというリズムに慣れるまでは苦労しました。とにかく、ウィークデーは仕事と子供の送り迎えで買い物などする時間はなく、買い物は土曜日1日のみに済ませなければならない・・土曜日は子供のお稽古事のハシゴと買い物というハードスケジュールに慣れるまでは、なかなか大変でした。今では、逆に日本に行った時も、日曜は買い物ができないモードになったままで、「あっ!そうだった!日本は日曜日もお店、やっているんだった・・」などと思わせられることもしばしばです。

フランスだって、日曜日にお店を営業すれば、みんなが買い物に行けて、便利になるのに・・と思うのですが、フランスでは日曜出勤には、追加分の給与を支払わなくてはならず、しかも組合が強いために、自分たちの雇用が脅かされる・・と、日曜だけの不定期の雇用を増加させることも、なかなかできないのだそうです。それでも、以前に比べると、日曜日に営業するお店は増えましたが、やっぱりお休みモードなのです。

それに比べると、日本の営業時間の長さは驚くべきもので、こんなにコンビニがたくさんあって、しかも深夜営業、24時間営業を続け、そのうえ、自動販売機もけっこうあって、こんなに必要だろうか? 終日営業や自動販売機・・環境問題は?とも思います。たしかに便利ではありますが、逆に日本を見ていると「夜は寝れば・・」と年寄りくさいことを思ってしまいます。

国が呼びかけなくてもフランス人が自主的に行うことといえば、デモやストライキぐらいのもので、フランス人にとってデモは日常で欠くべからず存在でもあります。日本では、デモというものをほとんど見たことがありませんでしたし、日本で生まれ育った私は、このデモの多さや、時には、それが暴徒化したりする様子に正直、辟易するところもありますが、最近の世界情勢を見ていると国民が政府の方策等に対して声をあげるということも、あながち間違いではないのではないか?と思うようになりました。

例えば、政府が不可思議な方向に進もうとすれば、フランス国民は決して黙ってはおらず、大規模なデモが起こり、議論が湧き上がります。毎週のように行われているデモのための警備にかけている費用は相当なものだと思われますし、時には、その防御のために戦争?と思われるような武装した装甲車のようなものまで登場します。しかし、それをおしてまで「デモの権利」をフランスは尊重しています。

なかには、とにかく何にでもひたすら反抗したい、デモに乗じて暴れる人々には、困り物ですが、デモによって、意見を交わし合い、それが議論に発展し、国を動かすことにも繋がることも事実です。日本には、日本のやり方があるとはいえ、日本の国民ももう少し、声を上げてもいいのではないか?と思うところがたくさんあります。特に現在の世界状況において、防衛問題は深刻な問題だと思っています。結果がどうであろうと、議論くらいはされて然るべき問題です。

国民が政府に対して声をあげる手段はデモだけではないのかもしれませんが、もう少し物申すことがあってもいいのではないか?とも思います。本来ならば、マスコミが代弁して国民の声を拾いあげて世論を動かしていく役割を果たしてもいいとは思いますが、それもあまり機能しているようには見えません。

毎週のようにデモが起こり、その度に機動隊が出動するようなフランスも困り物ですが、政府におとなしく従うだけの日本も困ります。これもまた、日本とフランス、足して2で割るとちょうどいい・・と思う一つです。

とりあえず、今回の公共交通機関のマスク義務化撤廃には、「やっぱり、日本人だね!」と一部のフランス人からは、侮蔑的に言われそうな気もしますが、せめてメトロの中でのマスクは個人的に継続するつもりです。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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