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農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり

森田早紀|オランダ

オランダ・コロナ規制緩和が急激に進んだ今、この2年間を振り返る

(筆者撮影 2020年5月 大学のオンライン授業)

2020年は私の代の成人式の年だった。

オランダに留学中で、この一日のために帰国はしないな~と決めていた私だが、成人の日当日になったらやはり気になって、心がうずうずして、インスタグラムで#○○市成人式なんて検索し、中学時代からの変わり様とおめかしでぱっと見誰かわからない無数の顔の中に、知り合いを探そうとしている自分がいた。

たまたま検索に引っ掛かって見つけたのは、疎遠になっていた中学時代の友達が挙げた同窓会の写真。「久しぶり!元気?」などと近況を報告し合っていたら、なんと彼女は2月に大学の研修でフランス・パリに来るということが発覚。

「パリだったら、私もオランダからバスで数時間で行けるじゃん!しかもちょうど春休みだ!」と彼女の一週間の研修中でタイミングを見つけて合流することにした。

が、予定の一週間前に「コロナで行けなくなっちゃった...泣」と彼女から連絡が。

ということで一人でパリの町をひたすら巡り歩いた。

その2週間後には、駅から自転車で15分の大学のキャンパスに行くことすら難しくなることも想像せずに...

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(筆者撮影 2020年2月 フランス・パリ)

その翌週、それぞれドイツとイタリアに一年ほどの短期留学をしていた高校の先輩二人がオランダに遊びに来た。アムステルダム市街や風車を周って楽しんだ2日間。しかしその間も、先輩たちはニュースや大学からの連絡を確認しては、「大丈夫かな?ドイツ・イタリアに戻れるかな?」と心配することが度々あった。

そして先輩たちがオランダを去ってから数日後。二人とも(日本の)大学から帰国命令を受け、急遽帰国することになった。

このようにして、私のコロナ禍生活が始まった。

大学の対面授業は無くなり、キャンパスには不要不急の場合には行かないように、とのこと。

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(筆者撮影 2020年3月 キャンパス内に設置された、握手禁止のサイン)

厳しい全土ロックダウンや外出禁止令等が課されたいくつかの欧州加盟国とは異なり、オランダの規制は比較的緩い方だった。外出はできるだけ控えるように、でも新鮮な空気を吸うためならOK。コロナ生活が始まったのはちょうど3、4月と春と共に暖かさがやってくる季節で、公園には散歩している人が多々見られた。

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(筆者撮影 2020年 近所の公園で日向ぼっこをしながら、大学の課題に取り組む)

大学の授業はオンラインが主になり、いわゆる生活必需品を売っているお店は閉店時間が早まり、飲食店やその他の店は営業禁止になった期間もあった。段階的に、公共の屋内でのマスク着用や1.5mの距離確保が義務付けられていった。

2020年の夏には規制が一度緩和されたが、やはり秋・冬の風邪の季節にはPCR検査陽性者数が増加し、新たな規制が課された。

厳しかったのは、2020年冬から2021年春の夜間外出制限。21時以降に不要不急の外出をした際には罰金が科せられることに。さらに、一日に家に招いていい人の数が1・2人など途轍もなく制限された。

 

私自身が大学生として感じたのは、やはりオンライン授業の限界。グループワークはとりわけ大変だった。

異なる文化が混ざるクラス環境では特に、非言語コミュニケーションに頼っているところもある。同じ空間を共有し議論や雑談、ハイタッチ・ハグ等ができないので、グループとして一体感が感じられず作業に滞りを感じることも多々あった。非言語的コミュニケーションの話に関連して、例えば普段は身振り手振りで豊かに楽しそうに表現をしているイタリア出身の友達がいるのだが、オンライン授業になったとたんにどこか喋り方に元気がなくなってしまった。

また、クラスメイトと会う機会がめっきり無くなってしまったのも心に穴が開いたようだった。2020年夏休みが始まり、外での集まりの人数制限が少し緩くなったころ、先生も含めて10人ほどの小さなクラスの小さなピクニックを近くの公園で開いた。2021年夏にも人数制限がある中、同じ公園・同じスポットで集まった。

2021年の11月、PCR検査の陽性者数が急増する中、ロックダウンが再び行われた。初日の土曜日にはシンタクラースというオランダのサンタなるものが船で到着するという日で、子どもたちのためだからと、このパレードだけは許可された(→シンタクラース関連記事

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(筆者撮影 2021年11月 シンタクラースが船で到着するのをまつ子ども連れの家族たち)

その中でも規制ギリギリのラインやそれを少し破った範囲で、多くの人は、クリスマスや年末年始を祝ったわけだが。

 

つらつらと大変だったことを列挙しているが、私は比較的恵まれている留学生だったと思う。

例えば冒頭の2人の先輩や、同じ時期にエストニアに留学していた高校時代の部活仲間は、日本の大学からの帰国命令を受けて急遽留学を中断しなければいけなかった。

また、2020年の秋に留学を始めた学生たちは、クラスメイトと顔を合わせる機会がほぼないまま大学という新たな環境に放り込まれ、さぞ大変な思いをしただろう。

その頃オランダに来た留学生たちは、新たな国に到着するやいなや自主隔離をしなければならず、オンラインで買い物をする決済の手段がない・どこで何を買ったらいいかわからない、そんな環境で1週間を乗り切らなければならなかった。私の大学では、私の属する学生団体が中心となって、主にヨーロッパ圏外出身の修士生たちのためにスーパーに買い出しに行き、届けたりもした。

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(筆者撮影 2021年9月 自主隔離中の留学生のための買い出し。玉ねぎ・お米・パン・牛乳などを大量に)

そして今年2022年。2月下旬にかけて、3段階での規制緩和が驚くほど急に、そして急速に進んだ。

規制緩和発表の記者会見があったその日から来客数制限がなくなった。そしてマスクの着用や1.5m間隔の義務も3段階を踏んでなくなっていった。  

一時は、大学の建物に入るためにも、コロナパス(ワクチン接種証明、回復証明、PCR検査陰性証明のいずれか)が必要になるのでは、と議論されていた。「教育の場は皆に開かれているべきだ」「オンライン授業期間中に学校に行けずに人と会う機会が減ったことで、学生のメンタルにどれだけの悪影響があったかは目に見えている」などと、動きに反対する署名活動があり、それに私もそれに賛同した。

その頃の心配も杞憂に終わるかのように、コロナパス提示義務もほぼすべての場所で撤廃された。

3月23日から、公共交通機関でもマスク着用義務がなくなった。花粉が飛び交う季節ではあるが、もともとオランダではマスクを着ける習慣が広がっていなかったため、多くの人はノーマスク生活に戻っている。

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(筆者の友人撮影 2022年3月 お花見日和の青空の下、賑わうアムステルダムの桜公園)

 

ちょうど規制が緩和されたのと同時にウクライナ・ロシアの問題が始まり、ニュースはその話で持ち切り、どこか話題がすり替えられたという感覚も否めないが。

 

Profile

著者プロフィール
森田早紀

高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ、4年制の大学でアグリビジネスと経営を学ぶ。卒業後は農と食に百の形で携わる「百姓」になり、楽しく優しい社会を築きたい!オランダで生活する中、感じたことをつづります。

Instagram: seedsoilsoul
YouTube: seedsoilsoul

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